装甲車の足まわり 混ぜるな危険! だった「タイヤ」と「履帯」が昨今そうでもないワケ

装輪車の性能向上でいずれ装軌車は姿を消すのか?

「装輪車」の性能向上について、ひと昔前の第二世代主力戦車である陸上自衛隊の74式戦車と同じ口径の105mm砲を、装輪式の同16式機動戦闘車が走行しながら精度の高い射撃をするのは象徴的です。空気の入った柔らかいタイヤで車体を支える装輪車は従来、反動の大きな大口径主砲は装備できないとされてきましたが、サスペンション、砲安定装置、射撃統制システム、砲架、車体などの優れた設計とそのトータルバランスで実用の域に達しています。

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後方へ走行間射撃する16式機動戦闘車。装輪車が反動の大きな105mm砲を走行しながら射撃するには様々な技術革新が必要だった(2021年5月22日、月刊PANZER編集部撮影)。

 単純な重量比較ですが、装軌車の「エイジャックス」は全備重量42t、装輪車の「ボクサー」は全備重量38tとほとんど差はなくなっており、防御力も充実していると想像されます。ちなみに74式戦車も38tです。

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105mm砲を装備する74式戦車。停止しなければ正確な射撃は難しかった。16式と74式では半世紀の技術差がある(2017年8月24日、月刊PANZER編集部撮影)。

 先に紹介した1992年のCFEで、戦車の定義に装輪と装軌を区別しなくなったのは、そのころから装輪式装甲車の進歩は目覚ましく、装軌車のテリトリーを侵しつつあったからです。現代の使い勝手では、タイヤがどうやら優位性を示しているようです。とはいえそれは、履帯の戦車が無くなることを意味するものではないでしょう。

【了】

【比較】その差約75年 ここまで一変した戦車

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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