装甲車の足まわり 混ぜるな危険! だった「タイヤ」と「履帯」が昨今そうでもないワケ

従来、装甲車はその足まわりがタイヤか履帯(いわゆるキャタピラ)かでまったく別物として扱われ、別々に運用するのが一般的でしたが、イギリスではこれらの混成編制が企図されています。それを可能とする背景を解説します。

装輪車と装軌車の混成 イギリス陸軍の場合

 イギリスは2021年現在、陸軍の機構改革を進めており、そのなかで主力戦車を主軸として高い打撃力を持つ機甲歩兵旅団と、装甲車を主軸として機動性を重視したストライク旅団を編成しようとしています。アメリカ陸軍も主力戦車と歩兵戦闘車を中心とする機甲旅団戦闘団と、前述した、機動性重視のストライカー装甲車を中心とするストライカー旅団戦闘団を編成していますが、イギリスの取り組みがアメリカの編成と見比べて特徴的なのは、装軌車も装輪車も同じ編制に組み込んでいることです。

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イギリス陸軍のストライク旅団で長距離偵察任務を担う予定の「エイジャックス」。部隊でトライアル中だが、開発状況は芳しくない模様(画像:イギリス国防省)。

 イギリスの機甲歩兵旅団は、主力戦車「チャレンジャー2」の近代化改修型と装輪式の「ボクサー」装甲車で編成されます。またストライク旅団は装軌式の「エイジャックス」装甲車と装輪式「ボクサー」装甲車で編成されます。一見、装軌車と装輪車の混成でアンバランスのようですが、軍内では装軌か装輪かという違いはあまり議論されなかったといいます。

 これは、戦い方が変わってきたことが理由です。同じ車両で固めて集団的に行動することから、少数が広く別々に行動しつつもネットワークで連携してサポートは緊密に行うというスタイルに変化しているのです。

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装輪装甲車ながら74式戦車とほぼ同じ重量の「ボクサー」。実戦経験もあり市場から一定の評価を得ている(画像:ARTEC GmbH)。

 ストライク旅団は、長距離を迅速に移動する緊急展開がおもな任務です。そのなかで、装軌車の「エイジャックス」はおもに偵察用として、路外や荒地でも浸透していく走破性が期待され、一方の装輪車である「ボクサー」はおもに機械化歩兵の移動用として、迅速な移動性能が期待されている、ということです。「エイジャックス」が浸透偵察して進路を見つけ、「ボクサー」が歩兵を載せて前進するイメージで、機動力のレベルを合わせる必要はない、という考えなのです。

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「ボクサー」から下車した機械化歩兵部隊、戦闘力は装甲車ではなく歩兵が発揮する(画像:KMW)。

 また機甲歩兵旅団の場合、主力戦車はどこでも走れるわけではありません。大きく重くなり過ぎた主力戦車は、荒地よりは路上や平地移動を好みます。通れない橋梁や道路もありますし市街地や森林地帯は苦手です。むしろ走れる場所を慎重に選択しています。そうしたことから、性能が向上した装輪式装甲車なら、随伴するのに問題なしと見なされているのです。

【比較】その差約75年 ここまで一変した戦車

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