「尾翼なんて飾りです!」稀代の設計者ノースロップが追求した「全翼機」実用化までの道のり

飛行機というと、主翼に細長の胴体、複数の尾翼というのが一般的な形状です。しかし、いまから100年も前に主翼と胴体が一体化した「全翼機」を考え付き、具現化した男がいました。彼の理念がアメリカ空軍に届くまでを振り返ります。

大貢献したフライ・バイ・ワイヤの登場

 とはいえ、YB-35やYB-49を試験した結果、全翼機特有の形状はレーダー波の反射が少なくなるという性質とともに、不安定な飛行特性により操縦が難しいことに加えて爆撃精度が低いという問題が明らかになります。

 ただ、このような欠点を解消する画期的な技術が、1960年代以降に登場しました。それは「Fly By Wire(フライ・バイ・ワイヤ)」と呼ばれる飛行制御方式です。直訳すると「電線で飛行する」となります。パイロットが操作する操縦桿やペダルと操舵面の間を機械的に結んでいた金属ロープやロッド、滑車などを、電気信号に置き換えようというものです。

 こうすることで操縦桿や操舵面の動きにコンピューターを介在させることができるようになるため、細かな操作補正を加えることが可能になり、人工的に飛行安定性を高めることが可能になります。この技術により操縦が難しい不安定な機体でも、毎秒数十回という頻度で補正を繰り返すことで安定して飛び続けることができるようになりました。

 このフライ・バイ・ワイヤの普及により、全翼機が再び脚光を浴びることになったのです。全翼機を得意としていたノースロップ社はレーダーに探知されにくいステルス戦略爆撃機としてB-2「スピリット」を開発、1989(平成元)年7月に初飛行すると、ついにアメリカ空軍の制式採用を勝ち取り21機生産、2021年7月現在も20機が現役で運用されています。

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ジェットエンジンを搭載したYB-49(画像:アメリカ空軍)。

 ちなみに、全翼機の生みの親ともいえるジャック・ノースロップはB-2「スピリット」の初飛行と制式採用を見届けることなく、1981(昭和56)年2月18日に85歳で永眠しています。

 ただ、その1年前、存命中にノースロップ社から当時極秘とされていた開発中のB-2爆撃機の模型をプレゼントされています。これはアメリカ空軍による粋な計らいでした。

 その直後に、ノースロップは生涯を閉じたわけですが、彼が理想とした全翼機B-2「スピリット」は1993(平成5)年の部隊配備以来、約30年経った現在においてもアメリカ空軍の切り札的存在として空を飛び続けているのですから、天国からその様子を眺めてさぞかし満足しているのではないでしょうか。

【了】

【写真】B-52やF-15と編隊組むB-2「スピリット」

Writer:

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

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