自沈すら阻止された不運すぎる独潜水艦U-505の逆転 かくて不名誉艦は栄誉に与かれり

WW2期、連合国が全力で解明に努めたドイツの暗号機「エニグマ」。これをめぐる逸話は枚挙にいとまがなく、なかでも決定的なできごとのひとつがU-505潜水艦の鹵獲でしょう。最悪の不名誉を被った同艦の、清々しいまでの逆転のお話です。

映画のモデルにもなった「U-505鹵獲事件」

『U-571』は第2次世界大戦中、アメリカ海軍がドイツの最高機密であった「エニグマ暗号機」を奪取するためドイツ潜水艦U-571を鹵獲するというストーリーの、2000(平成12)年に公開されたアメリカ映画です。タイトルにもなっているU-571という潜水艦は実在するものの映画そのものはフィクションである一方、ドイツ潜水艦をアメリカ軍が鹵獲しエニグマ暗号機を奪取したという事件は実際に起こっています。

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アメリカ海軍に鹵獲され、曳航準備中のU-505。艦の後部が浸水により沈下している(画像:アメリカ海軍)。

 実際にエニグマ暗号機を奪取された艦は「U-505」、ドイツ潜水艦、いわゆる「Uボート」のIX C型で、日本海軍に譲渡編入された呂500(呂号第五百潜水艦)となった「U-511」も同型艦です。U-505はアメリカ海軍に鹵獲され、あまつさえドイツの最高機密エニグマ暗号機を奪われた「不名誉艦」のようですが、21世紀の現代まで生き残ってドイツの技術遺産継承の任務を担う「名誉艦」でもあります。

運に恵まれなかった「不名誉艦」

 U-505は1941(昭和16)年5月24日にハンブルクで進水、1942(昭和17)年3月5日にイギリス商船「ベンモア」撃沈の初戦果を挙げて以降、12回の哨戒において8隻(合計4万4962トン)の船舶を撃沈しています。しかしなにかと運の悪い艦で、哨戒に出撃しては損傷したり、故障ですぐに帰還したりすることも多く、1942年9月6日から2代目艦長に着任したペーター・ツェッヘ大尉は「常に帰還する艦長、その名はツェッヘ」と陰口を叩かれていました。乗組員の士気も芳しくなかったであろうことが想像できます。

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U-505の艦長室(画像:アメリカ海軍)。

 1943(昭和18)年10月24日、ポルトガル西方沖約1000kmにあるアゾレス諸島の東でイギリス駆逐艦に発見され、激しい爆雷攻撃に晒されます。潜水艦映画では爆雷攻撃の恐怖で乗組員がストレスのあまり暴れ、ベテラン艦長がこれをたしなめるというシーンはよく描かれるところですが、U-505ではこともあろうに艦長のツェッヘ大尉がピストル自殺してしまいます。戦闘中に潜水艦艦長が自殺するという事案は非常に珍しいことです。U-505は先任士官のパウル・マイヤー中尉が統率して何とか帰還を果たします。

【写真】沈没待ったなし! 米海軍による緊迫のU-505鹵獲作業

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