自沈すら阻止された不運すぎる独潜水艦U-505の逆転 かくて不名誉艦は栄誉に与かれり

WW2期、連合国が全力で解明に努めたドイツの暗号機「エニグマ」。これをめぐる逸話は枚挙にいとまがなく、なかでも決定的なできごとのひとつがU-505潜水艦の鹵獲でしょう。最悪の不名誉を被った同艦の、清々しいまでの逆転のお話です。

自沈すら阻止される不運艦U-505 そして「最高機密」は奪われた

 3人目の艦長となるハラルト・ランゲ中尉指揮のもと、U-505は1943年12月25日に11回目の哨戒任務へ出ると、12月28日にフランス西岸とスペイン北岸に面するビスケー湾でイギリス巡洋艦に撃沈されたドイツ水雷艇T25の乗組員23名を救助し、1944(昭和19)年1月2日には戻ってきました。「常に帰還する」ジンクスは付きまとっていたようですが、人命救助ですから不運とはいえません。

 運を使い果たしたのが1944年3月16日の、12回目の出撃です。U-505は西アフリカ沿岸まで進出したところ、6月4日、アメリカ海軍のダニエル・V・ギャラリー大佐が指揮する、護衛空母USS「ガダルカナル」と5隻の駆逐艦からなるタスクグループ22.3に捕捉されます。攻撃を受けて艦は損傷し、ランゲ艦長は艦の放棄と自沈を命じました。U-505は浮上し、総員退艦には成功したものの、自沈処置が不徹底でなかなか沈没しません。ギャラリー大佐は鹵獲のチャンスとみて、移乗班をU-505へ乗り移らせます。

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1944年6月4日のタスクグループ22.3とU-505のトラックチャート。駆逐艦と艦載機から執拗に追い回されていることが分かる(アメリカ海軍画像を月刊PANZER編集部にて加工)。

 8名の移乗班は海図と暗号表を確保、自沈用バルブを閉鎖し、自爆装置を解除して、U-505の自沈を阻止します。こうして沈没を免れたU-505は2740kmを曳航され、6月19日に北大西洋 バミューダ諸島のポートロイヤル・ベイに入港しました。

 U-505から押収された暗号資料は、6月20日には連合軍の暗号学校がある、イギリス バッキンガムシャーのブレッチリー・パークに送られます。ポートロイヤル・ベイ入港からわずか1日、エニグマの解読がいかに重視されていたか分かります。この資料解読から連合軍は、Uボートの作戦海域をより正確に把握できるようになったといわれます。

【写真】沈没待ったなし! 米海軍による緊迫のU-505鹵獲作業

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