渋谷から秋田へ 絆の証となった東急「青ガエル電車」の今 そばにはハチ公と廃線跡も

秋田での余生は「ハチ公」が結ぶ架け橋

「青ガエル」が余生を送る「秋田犬の里」は、奥羽本線大館駅のほぼ向かい側に位置します。施設の入口では真っ先にハチ公の像が出迎えてくれます。秋田犬「ハチ」の生まれ故郷がここ、大館なのです。「ハチ」が生まれたのは1923(大正12)年11月で、まもなく生誕100年を迎えます。

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「秋田犬の里」の入口にあるハチ公像(乗りものニュース編集部撮影)。

「青ガエル」は、そこからほどなくして視界に現れます。芝生広場に小さなプラットホームが設けられ、そこにパンタグラフを下ろした姿で「停車」しています。「渋谷⇔桜木町」というサボ(行先標)は渋谷にいた頃からそのままですが、さらに窓にイラストで「渋谷-大館」という方向幕が描かれています。

 かたわらには記念碑があり、そこには「この車両は、忠犬ハチ公を縁として交流を続ける渋谷区との更なる親交の象徴として、渋谷駅前から移設されたものです」とあります。

 渋谷駅にあった頃は観光案内所となっていたこの車両、現在はこの、ハチ公を通じた大館と渋谷の交流のあゆみをパネルやポスターで紹介する場となっています。

 去年まで置かれていた渋谷の街とは異なり、人はまばら。長野県から自動車で来たという30代の男性は「かつて熊本電気鉄道で乗ったことがある。(車体を指して)ドアの下のほうも側面に合わせて大きく湾曲している形状に、最初は驚いた。引退は残念だったが、こうして再会できたのは嬉しい」と話します。

 なお、すぐ横には一本の線路が伸びています。これはかつて大館駅から伸びていた小坂製練小坂線の廃線跡です。小坂線は大館駅から約22km東の小坂駅までを結んでいた鉄道路線で、鉱山で採掘された銅や亜鉛などの運搬も行っていましたが、1994(平成6)年に旅客営業が廃止、残った貨物営業も2009(平成21)年に廃止されました。

 この廃線跡は今も往時の雰囲気を比較的とどめているほか、旧大館駅周辺では遊歩道とともに「鉄道パーク」として整備され、冬季を除く土・日・祝日には観光用の手漕ぎトロッコで廃線路を300mにわたり走行することができます。しかも「秋田犬の里」ならではでしょうか、リードなどをつけた状態であれば犬との同乗も可能です。

【了】

【大館の「青ガエル」の現在の姿を見る】

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コメント

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1件のコメント

  1. 渋谷区は大変なことをしましたね。
    東急往年の名車を、車両には縁のない大館に移設とか何を考えてるんですかね。
    しかもトップナンバー1号機を足回りを取り、短くして無残な姿にし、渋谷区が管理が出来なくなって大館に送るという…
    本当残念です。