実は旅客の“顔”を見て微調整!? ANAパイロット機内アナウンス 裏側が深イイ!

実は難しい「音量」 場面によっても微調整!?

 また、もうひとつパイロットが機内アナウンスで気を払っている点は、実は”音量”とも。

「自分が話している音量が大きいのか小さいのか、コックピットでは正確にわからないことも、機内アナウンスの難しさのひとつです。パイロットは機内アナウンスの声をヘッドセットで聞くことはできますが、コックピットでは客席のようにスピーカーで室内に響き渡ってはいません。もしもコックピットのスピーカーからアナウンスが響き渡ると、管制官との交信などの妨げになるからです。したがって、パイロットは自分の機内アナウンスのボリュームが正確にはわからない状態で話します」(ANAのパイロット)

 そのことから同氏は、経験で適切な声量を把握するほか、ときどき客室乗務員にアナウンス音量の意見を聞くようにして自分の感覚を確認・修正しているとのこと。また、上昇中と降下中でエンジン音の大きさが変わることを踏まえ、たとえば上昇中の機内アナウンスは少しだけ大きめの声を意識するなど工夫しているとのことです。

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ANAのボーイング787-10のコックピット(伊藤真悟撮影)。

 また機内アナウンスを行うパイロットは同時に、もう片方の耳で管制官の自機や他機への交信を常に聞き、またもう1人のパイロットがどのような操作をしているかといった動向をモニターしているとも。実は旅客へアナウンスしている裏側では、パイロットがさまざまな工夫をしていました。

 もちろんアナウンスは巡航中の「ご搭乗ありがとうございます……」から始まるものだけではなく、場合によってはイレギュラー時や緊急時にも実施されます。そのようなケースでは、操縦の手順をこなしながら、内容を的確かつ簡潔に伝えることが重要で、難しいポイントとして挙げられるそうです。

「様々なケースを想定した機内アナウンスは、日頃からどのような感じで話すのかをイメージしていないと、いざというときに要領よく行うことができません。さらに、日本語のみでなく英語でのアナウンスが必要になる場合もあり、その内容も考えておく必要があります」(ANAパイロット)

 パイロットによる機内アナウンスは、利用者への単なる搭乗御礼だけでなく「イレギュラー時や緊急時の説明責任、安心や信頼の醸成といった意味合いも持っています」ということでした。

【了】

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