プロペラ邪魔だし穴開けよう WW2欧州戦闘機の「モーターカノン」ってどういうもの?
独ソでは重要装備になるも…最大の欠点は柔軟性か
この武装に大戦中、最も研究熱心だったのはドイツ空軍でした。スペイン内戦時からの主力戦闘機であるBf109の、1941(昭和16)年春頃から登場したF型以降は、マウザー社製の20mm機関砲 MG 151をモーターカノンとして搭載し、従来の炸薬比率が高い高火力のりゅう弾を使用することで、絶大な火力を誇りました。さらにBf109の最終量産タイプであるK型では、30mm機関砲であるMK 108を搭載するなど、大幅に火力を向上させました。
またソビエト連邦空軍もShVAK 20mm機関砲が、Yak-1からYak-9までのYakシリーズやLaGG-3といった戦闘機のモーターカノンとして使われ、ドイツ軍よりもモーターカノンを多用しています。
最終的に30mmクラスのモーターカノン搭載機も現れましたが、砲を大きくすれば、それを通すエンジンの方も再設計が必要になるということで、高度な金属加工技術や膨大な手間が必要でした。
大戦中の急速なエンジン性能向上についていくためには、モーターカノンは明らかに柔軟性を欠いていましたが、米英軍の4発大型爆撃機を相手にしなくてはならないドイツ軍機は機首に集中した1発ごとの高火力を期待し、モーターカノンを使い続けるしかありません。そのため、振動源であるエンジンのシャフトに機関銃を通しているという構造的な問題から発生する、給弾不良などのトラブルに大戦を通して悩まされることになり、防空に必要であるBf109の稼働率の低さなどを招いてしまいました。
なおアメリカ軍では、現在でも使われているブローニングM2重機関銃を航空機銃にした12.7mm機関銃を、命中精度や火力を上げるために多数、翼内に搭載し、その重量を大馬力のエンジンで補うという方法を取ります。イギリス軍も同様に、12.7mm機銃やそれ以上の大口径砲を翼内に多数、積みました。結局、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」方式をとった方が、精密でデリケートなモーターカノンを使い続けるよりも合理的であり、柔軟性もあったといえるかもしれません。
【了】
Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。
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