歩兵1人でも戦車を撃破! ぶ厚い装甲貫く成形炸薬弾の仕組み 世紀の発見“メタルジェット”

成形炸薬弾の原理「モンロー効果」とは

 さらに、「運動エネルギー」で装甲板を貫く徹甲弾は、飛翔するエネルギーも貫徹力の一要素であるため、飛翔距離が遠くなればなるほど威力が低下するという欠点があります。しかし成形炸薬弾の場合、炸薬の爆発、すなわち化学エネルギーによって装甲板に穴を開けることから、貫徹可能な装甲厚は炸裂する炸薬量のみで決まり、むしろ運動エネルギーは関係ないため、どんな近距離でも遠距離でも、原理的には貫徹力は同一で変化しません。

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成形炸薬弾のカット展示。内部の漏斗状の部分から前側は空洞になっている(柘植優介撮影)。

 高速で発射する必要がなければ、発射装置にも大口径砲のような強度を必要としないので、軽量化が可能。このことは、個人で携行する対戦車兵器の発達にもつながりました。

 では、一体どのようにして成形炸薬弾は装甲板を貫いているのか。前述したとおり、成形炸薬弾は徹甲弾のように砲弾内部で炸薬が爆発して装甲板に穴を開けるため、「貫く」のではなく、むしろ「吹き破る」という方が適切といえるでしょう。この「炸薬の威力によって装甲板に孔を穿つ」という原理が、「モンロー効果」や「ノイマン効果」といわれるものです。このふたつの「効果」は、両方とも発見者の名が由来です。

 モンロー効果の由来になったのは、アメリカ人科学者チャールズ・E・モンロー。彼は1888年(異説あり)に、ひとつの興味深い事実を発見しました。円筒形をした爆薬の片方の先端に、漏斗(ろうと)のような円錐形のくぼみを設けて、そのくぼみのある面を装甲板に密着させ、くぼみがある面とは反対側の面から起爆させると、くぼみが密着していた装甲板に孔が穿たれるというものでした。

【写真】陸上自衛隊の対戦車ミサイル&格子状装甲を取り付けた装甲車

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