歩兵1人でも戦車を撃破! ぶ厚い装甲貫く成形炸薬弾の仕組み 世紀の発見“メタルジェット”
成形炸薬弾のもうひとつの原理「ノイマン効果」
基本的に爆発力というのは、爆心から外に向かって球状に拡散していきます。そのため、装甲板の外側で爆発が生じても、爆発の一部が装甲板の広い面にかかるだけに過ぎず、ゆえに装甲板に孔を穿つことはできません。
一方、モンロー効果では、端的にいうと円錐形のくぼみの後方から起爆した爆薬の爆発力が、くぼみによってレンズが焦点を結ぶように装甲板の一点に集中的に超音速で吹き付けられることで、威力がその一点に集約され、これにより、吹き破るように装甲板に孔が穿たれるのです。そして、この爆薬の先端に設けられた「円錐形のくぼみ」の角度は、30度から45度程度が適切だということも判明しました。
モンロー効果の発見から約20年後の1910年、ドイツ人科学者エゴン・ノイマンは、モンロー効果の円錐形のくぼみに合わせて薄い金属板の内張りを施すと、装甲貫徹力がいっそう高まることを発見します。これが、ノイマン効果です。こちらの原理は、要はモンロー効果によって生じた爆発力に金属内張りが超音速の金属塊として加わることで重くなり(これをメタルジェットと呼ぶ)、より厚い装甲板の貫徹が可能になるというものです。
これらモンロー効果とノイマン効果を合わせて誕生したのが、成形炸薬弾(HEAT弾)というわけです。前述したように、旧式化した低初速砲であっても、その砲から発射できる成形炸薬弾を造るだけで対戦車戦闘が可能となるのですから、短期間で対戦車戦闘能力を向上させることができます。
そのため、第2次世界大戦ではあっという間に世界各国へ普及し、また高速で撃ち出す必要がないことから、小銃から発射可能な対戦車小銃てき弾、信号弾を発射する信号拳銃用の対戦車てき弾といったものから、歩兵ひとりで携行し、状況に応じて肩撃ちが可能なバズーカ砲のようなものまで、多種多様な対戦車火器が短期間のうちに開発されました。
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