潜水艦建造キャンセルでフランス怒り心頭! 米英豪とのトラブル 日本は傍観?
豪政府にしたら「わかっていただろう?」
フランス政府がアメリカとオーストラリアに強硬姿勢を示している理由は2つあります。
オーストラリア政府とフランスの政府系造船企業であるナバル・グループは、オーストラリア国内でアタック級12隻を建造するための契約を締結し、すでにその準備作業にも着手していました。ナバル・グループの受注総額は2016(平成28)年に契約を発表した時点で約500億オーストラリアドル(約4兆円)と発表されています。
防衛産業が国家の基幹産業のひとつであるフランスにとって、アタック級の建造契約を失うことはとてつもなく大きな経済的痛手であり、容易に認められるものではなく、ナバル・グループは建造設備の解体費用やこれまでに投じたコストを計算して、オーストラリア政府に要求する方針を示しています。
もうひとつの理由は、フランスがアタック級の建造契約破棄に関して、オーストラリア政府から事前に相談を受けていなかったことです。もっともこの主張に関しては、フランス政府とオーストラリア政府の主張には食い違いがあり、フランス政府がAUKUSの発足会見の数時間前に通告されたと主張しているのに対し、オーストラリアのスコット・モリソン首相は「契約が破棄される兆候にフランスは気づいていたはずだ」と反論しています。
前述したように、2016(平成28)年の時点でアタック級12隻の建造コストは約4兆円と見積もられていましたが、オーストラリア国内での造船インフラの整備や、搭載機器の価格上昇などから、アタック級の建造見積りは上昇の一途をたどっており、このままアタック級の建造を続けるべきか否かの議論が活発化していました。
モリソン首相はこの状況からフランスに「こうなることはわかっていただろう?」と言いたかったのかもしれませんが、フランスにとっては納得できるものではなかったと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
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