空を飛び、海を泳ぎ、陸を走る! 空母にも発着可能な万能飛行機 グラマンJ2F「ダック」

高出力エンジンを備えた改良型も

 かくして、グラマンJF「ダック」は採用されたあとも、出力750馬力のライトR-1820-102「サイクロン」空冷星型エンジンから、より大出力な790馬力のライトR-1820-30に換装され、各部が手直しされた改良型のJ2Fが開発されています。本機は1936(昭和11)年4月2日に初飛行すると、JFと同じ愛称である「ダック」と名付けられ、第2次世界大戦が終わった1945(昭和20)年まで生産され続けました。

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車輪を出して陸上の飛行場に着陸したグラマンJ2F「ダック」(画像:アメリカ海軍)。

 大戦において「ダック」は、海軍だけでなく沿岸警備隊でも使用され、偵察、連絡、対潜哨戒、人員や傷病者の輸送、標的曳航、航空救難と、実に広範囲の任務を1機でこなせる万能ぶりを発揮、その汎用性の高さから戦後は空軍でも運用されています。ちなみに、VIP輸送のため客室に豪華な内装を施した機体も5機ほどありました。

 生産機数はJFが48機、改良型のJ2Fが584機で、最終的には1050馬力のライトR-1820-64エンジンを搭載するまでに至っています。外観的には決してスマートではなく、むしろ“醜いアヒルの子”といった感の強い機体でしたが、文字通りアヒルのような水陸両用の汎用機として、地味ながら重用されたのでした。

 ちなみに、『アラビアのロレンス』で有名な名優ピーター・オトゥールが主演した戦争映画の名作『マーフィーの戦い』では、原作に登場するフェアリー「ソードフィッシュ」水上機の代役で、J2F「ダック」がイギリス海軍機の塗装を施されて活躍しています。映画を堪能しつつ、「アヒル君」の勇姿を合わせて堪能するのもまた一興です。

【了】

【ユーモラスな姿】J2F「ダック」を様々なアングルから

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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コメント

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2件のコメント

  1. 良い記事ですね。飛行機好きですが、この機種については知りませんでした。日本語記事で他に詳しいものも見当たりませんし、興味深かったです。戦史などにもあまり登場しないと思いますが、面白い飛行機だと思いました。

  2. ぱっと見着陸しづらそうだなぁお腹に客室があると相当恐ろしいのでは…広く使われていたということはそうでもないのか?操縦性に関するエピソードがあれば◎