独仏因縁の食堂車! オリエント急行で知られるワゴン・リ社の「2419号車」が見た歴史

オリエント急行の名は広く知られますが、その運行会社であるワゴン・リ社が製造した車両のひとつ「2419号車」の知名度は、日本ではあまりないかもしれません。「休戦の客車」とも呼ばれる同車両は、歴史の表舞台に2度も登場しました。

屈辱の象徴を勝利の証に ヒトラーが仕掛けた劇的な「演出」

 1918(大正7)年11月11日、パリ近郊コンピエーニュの森の重砲部隊用に敷設された線路に、前述した連合軍総司令官フォッシュ元帥専用列車の姿がありました。そしてその2419号車内にて、ドイツと連合国とのあいだで第1次世界大戦の休戦協定が結ばれました。

 終戦によって2419号車は徴用を解かれ、ワゴン・リ社に返還されましたが、フランス政府に歴史的記念物として寄贈されます。同車両はパリの廃兵院に展示された後、コンピエーニュの森に新たに建設された休戦記念館へ移されました。

 しかし平和は続きません。1939(昭和14)年9月1日に第2次世界大戦が勃発し、ドイツの侵攻を受けたフランスは降伏します。1940(昭和15)年6月22日、フランスとドイツのあいだで休戦協定を結ぶにあたり、ドイツ総統ヒトラーは恰好の舞台を用意します。22年前にドイツが屈辱を受けた、休戦記念館に保管されていた2419号車です。

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壁を壊して運び出される2419号車(画像:Bundesarchiv、Bild 146-2004-0147/CC-BY-SA3.0、CCBY-SA3.0DE〈https://bit.ly/2YCUfAL〉、via Wikimedia Commons)。

 6月21日の調印式前日、コンピエーニュの森の休戦記念館はその壁が壊され、そして1918年11月11日と同じ場所に2419号車が引っ張り出されました。翌22日、第1次世界大戦の休戦記念碑にはハーケンクロイツの旗が翻り、ドイツ軍儀じょう隊が整列します。2419号車の車内では、22年前に連合軍総司令官フォッシュ元帥が座った席にヒトラーが座り、フランス代表団を待ち構えます。しかし会談が始まると、ヒトラーは途中で席を立ち休戦協定の調印そのものには立ち会いませんでした。フランスに仇を返したことを示す、計算しつくされたプロパガンダです。この時の様子は、写真や映画で撮影されています。

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2419号車とヒトラーほかナチス・ドイツ幹部(画像:Bundesarchiv、Bild183-M1112-500/CC-BY-SA3.0、CCBY-SA3.0DE〈https://bit.ly/3lotJnc〉、via Wikimedia Commons)。

 現場で取材したアメリカCBSラジオ記者ウイリアム・L・シャイラーは、調印に立ち会わずひと足先に2419号車から退出した瞬間のヒトラーは歓喜しているようには見えず、満足と深い復讐心と憎悪が入り混じった複雑な表情をしていたと証言しています。

【写真】ヒトラーの壮大な意趣返し 1940年独仏休戦協定と2419号車

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