ミッドウェー海戦大敗北は「利根四号機」の責か 重巡「利根」とその艦載偵察機の戦い

太平洋戦争のターニングポイントとなったミッドウェー海戦、その勝敗を分けたのは、1機の偵察機かもしれません。永らく大敗北の一因と語られてきた1機の偵察機と、その所属艦である重巡洋艦「利根」の航跡を追います。

「利根四号機」がミッドウェー海戦の敗因に挙げられるワケ

 ミッドウェー海戦での実際のアメリカ空母の進路をたどると、「利根四号機」が予定どおり発進していたら彼らを発見することはできませんでした。「利根四号機」の航法機器が狂っており、飛行コースが予定より南にずれ、しかも何らかの理由で予定よりも短い距離で引き返しています。その結果、空母「ヨークタウン」を発見することができたわけですが、しかし航法機器の狂いは後々まで影響します。同機は敵空母位置を北に160kmもずれて報告しており、これが日本機動部隊司令部に、敵艦隊とはまだ距離があり敵機来襲まで時間的余裕があると誤った判断をさせてしまったともいわれます。

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ミッドウェー海戦、日本機動部隊からの索敵線。利根四号機は予定のコースを飛ばなかったため米空母と接触できたが、誤った位置を報告した(作図:月刊PANZER編集部)。

「赤城」「加賀」「蒼龍」の3空母が被弾後、単独で反撃することになった「飛龍」の攻撃隊が間違った位置情報の「ヨークタウン」を攻撃できたのは、ヨークタウン艦載機を発見、追尾できたという幸運によるものです。「利根四号機」が敗北の戦犯というのは言い過ぎでしょうが、敵空母発見の功労者とも言い切れません。

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1945年7月24日、呉で空襲を受ける「利根」。米空母「シャングリラ」の艦載機が撮影(画像:アメリカ海軍)。

「利根」はその後も、偵察戦という地味ながら重要な任務を黙々とこなします。レイテ沖海戦では姉妹艦「筑摩」を失いながらも生き残り、1945(昭和20)年1月1日付で練習艦となり、燃料不足から呉から動けず、大破着底状態で終戦を迎えます。1948(昭和23)年9月30日に解体完了、「利根」が呉地区に残っていた最後の大破艦でした。

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1945年10月8日に撮影された、呉で大破着底した「利根」(画像:アメリカ海軍)。

 ミッドウェー海戦当時、「利根四号機」機長だった甘利洋司飛曹長(後に少尉)は、その後、練達の水上機パイロット主体で編成された夜襲飛行隊「芙蓉部隊」に配属されます。沖縄戦のなか、アメリカ軍に占領された北飛行場を夜間爆撃に成功するなど活躍し、やがて1945年(昭和20)年5月13日、艦上爆撃機「彗星」で索敵中にアメリカ空母を発見します。ミッドウェー海戦に続き敵空母発見の最重要電文を2度も発信したことになりますが、その直後、敵戦闘機に撃墜され戦死しています。

【了】

主砲の配置が特徴的すぎる重巡「利根」の米海軍艦種識別表

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

3件のコメント

  1. 今は衛星が海上を監視しています田(^∇^)田水上艦だけでなくシュノーケル中の通常動力潜水艦も発見できるそうです(☆∇☆)

    日本の海洋監視衛星の陣容や運用は十分でしょうか(?_?)不備があれば利根4号機の惨劇が再来するでしょう(ToT)

  2. しかし、索敵機の数を多くすれば攻撃に回す機数が減ることにもなります。雲の量など天候にも左右されますし、当時の無線機や航法機器もあまり頼りになりません。しかも低速の水上機は敵戦闘機に発見されたら逃げられませんので、接敵も慎重にならざるを得ません。索敵は多分に運任せでした。

    水上機は攻撃に回さないでしょ…

  3. とかく、当時の利根・筑摩などの索敵機能力の低さという話だけが原因であるかのように言われていますが、私個人と意見としましては、この海戦の2ほど前に、日本本土よりハワイ方面から、太平洋方面にかけて米海軍の至急電報が多しという警告電報が南雲艦隊の後方を航行していた山本五十六指揮下の連合艦隊に届いていました。これを、当時の宇垣参謀長が、多分南雲艦隊にもこの知らせが達しているだろうと勝手にいいように推測して、念のために無線能力の低い赤城以下の南雲艦隊に転送すべきでは?という他の参謀達の意見具志を止めてしまったことが、最大の敗因だと思われます。この報告が南雲艦隊に届いていれば、全く違った戦局になっていたのでは?と思われます。

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