M1「エイブラムス」戦車の動かし方 乗り込むのにもひと苦労? 始動から停止まで

乗り込んでからエンジン始動までにも手順あり

 準備が整っても、エンジンを勝手に始動させてはいけません。車長に準備完了報告をして待機します。ここで砲手は砲塔旋回動力スイッチがオフになっていることを確認します。車長は車内状況と、特に戦車の後ろに誰もいないことを確認します。戦車の真後ろに人がいると、ガスタービンエンジンの排気ガスで吹き飛ばされてしまう危険性があるのです。

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スロットル付バーハンドル。左ハンドルがスロットルグリップで、中央にトランスミッションセレクター、左からR、N、D、L。下にPVTモード(画像:アメリカ陸軍)。

 安全確認した車長のエンジン始動命令を受けて、操縦手は操縦席右側にあるメインパネルのエンジンスタートボタンを1秒、押し込みます。エンジンが正常に始動すればスタートボタン上部の確認ランプが点灯し、不具合があればスタートボタン下部の中止ランプが点灯します。操縦手はエンジンから離れておりヘッドセットも付けているので、エンジン状態は五感で確かめにくく、計器類が頼りになります。

 エンジンが始動したら回転数や油圧、ブレーキ、トランスファーのチェックを行います。トランスファーは装軌(いわゆるキャタピラ)車特有の機構で、方向転換するのにステアリングの操行に応じて左右の履帯の回転数を変える仕組みです。ブレーキペダルを踏みながらギアセレクターをDにしてステアリングを左右に切って、ゴツンと当たるような音が出れば正常です。

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輸送船から卸下中のM1戦車。砲塔は後ろ向きになっている。視界が狭いのでこうした場合は車外からの誘導が必要になる(画像:アメリカ陸軍)。

 いよいよ戦車を動かします。アクセルは足元にはなく、バイクと同じようにステアリングハンドルがスロットルになっています。足元にあるのはサービス(常用)ブレーキとパーキングブレーキのペダルです。スロットル付のバーハンドルで、操作方法はオートバイと同じで簡単です。

 しかし勝手に戦車を動かすのは厳禁です。「前へ進め」という車長の命令でブレーキペダルを確実に踏み込み、解放レバーを引いてパーキングブレーキを解放します。セレクターをDにしてブレーキペダルから足を離し、スロットルを入れていきます。

 トランスミッションはオートマチックで、最適なギアに自動的に変速され、快適な運転が楽しめます。ちなみにセレクタポジションNの下にPVTという位置がありますが、これは装軌車独特のもので、左右の履帯をそれぞれ反対方向に回転させて超信地旋回させるPVT(pivot turn)モードになります。

【図】M1「エイブラムス」戦車の操縦室詳細

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