知られざる「日本人初エースパイロット」の足跡 義勇兵バロン滋野フランスの空を守る

日本人初のエースパイロットはWW1期、フランス陸軍に誕生しました。いわゆる義勇兵です。当地で広く知られたその名は、しかし日本の航空史にはあまり見受けられません。偉大なるヒコーキ野郎、バロン滋野こと滋野清武の半生を追います。

不遇の日本を飛び出してフランス軍へ

 すでに日本で最も経験豊富なパイロットとなっていた滋野は、日本陸軍に教えを乞われたものの、民間人、音楽学校出身、文化系、温和で暴力を振るわない、病弱、マルチリンガル、華族の当主(男爵)、先代が成り上がり……などなど、軍人に嫌われそうな要素をこれでもかと詰め込んだような人物でしたから、案の定、帝国陸軍を追い出されます。

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フランス軍の日本人義勇兵パイロット、滋野清武大尉。日本人初のエースとなった(画像:Unknown author、Public domain、via Wikimedia Commons)。

 日本に嫌気が差した滋野はフランスへ渡りますが、ほぼ同時に第1次世界大戦が勃発。どうしても空を飛びたかった彼はフランス軍へ志願しました。するとなんとフランス軍は、「滋野は飛行経験豊富なパイロットだから当たり前である」と言わんばかりに、いきなり大尉として抜擢します。「大尉」という階級は航空部隊の隊長格であり、日本で理不尽な扱いを受けていた滋野は涙を流し喜びました。

 かくして滋野の伝説が幕を開けます。飛行機が好きで仕方がない滋野は、少しでも長く飛行機に乗りたいと思い、危険な任務であろうと率先して引き受けました。地上のフランス人兵士たち、特に着弾を修正するための「観測機」の支援が必須だったフランス軍砲兵は、毎日欠かさずやってきては何百発もの砲弾が飛び交う最前線の上空でも恐れず観測信号を送り続ける観測機、そのパイロットたる滋野の勇敢な戦いぶりを目撃することになります。

 たちまち、日本からやってきた勇敢なパイロットという記事が新聞に掲載されるまでになり、その軍功からレジオンドヌール・シュヴァリエ(フランス軍騎士勲章)が授与されました。

 第1次世界大戦の少し前、フランスでは日本文化の大流行、いわゆる「ジャポニズム」がありました。日本からやってきた滋野の姿は、浮世絵に描かれた気高きサムライそのものだったのです。

自ら設計した飛行機に搭乗する滋野清武

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