知られざる「日本人初エースパイロット」の足跡 義勇兵バロン滋野フランスの空を守る

日本人初のエースパイロットはWW1期、フランス陸軍に誕生しました。いわゆる義勇兵です。当地で広く知られたその名は、しかし日本の航空史にはあまり見受けられません。偉大なるヒコーキ野郎、バロン滋野こと滋野清武の半生を追います。

偵察機で戦闘機をも撃墜 ついにエース部隊へ

 その後も、当時の世界最強戦闘機フォッカー アインデッカーを偵察機で返り討ちにし最初の撃墜を達成するなど軍功を重ね、ついに戦闘機パイロットとなり、「シゴーニュ戦闘航空群」へ転属、最新鋭の高速重戦闘機スパッドS.VIIが与えられます。スパッドS.VIIは「エース専用機」として配備が始まったばかりであり、滋野は自分のスパッドS.VIIに「わか鳥」というニックネームを与えました。

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「フォッカー アインデッカー」シリーズのE.III。「アインデッカー」は「単葉」を意味する(画像:帝国戦争博物館/IWM)。

 シゴーニュ戦闘航空群はフランス軍におけるエリート中のエリートそのまたエリートを集めた戦闘機部隊であり、伝説的でさえあります。当時フランスでシゴーニュ戦闘航空群を知らないものなど存在しませんでした。シゴーニュ戦闘航空群にやってきたときの滋野の撃墜スコアはまだ1機でしたが、1917(大正6)年に流行病が滋野をノックダウンしてしまうまで、非公認を含め撃墜数は8機を数え、エースとなります。

 第1次世界大戦においてほぼ毎日、出撃をこなした滋野は驚異的です。なぜなら第1次世界大戦期のパイロットとは通常、半月もすればたいてい操縦ミスで事故死するか、そうでなければ戦死していたからです。

 滋野は誰よりも飛びましたから、悪天候も故障も怪我も致命的になりうる状況にも遭遇し、エンジン停止さえ何度もありました。ところが、滋野だけがトラブルに遭っても生還するのです。

 任務外でも時間があればフランス人部下たちに操縦を指導するため飛び、自分の機の整備ともなれば整備員と最後まで一緒に働く。寝ても覚めても飛行機のことを考え、うまく操縦するにはどうしたら良いのか仲間たちと切磋琢磨する――飛行機が好きすぎる滋野は、どんな故障や負傷であろうとも冷静に最適な手順を実行できる知識、技術、精神、そして実際に何度もやってのけた自信、すなわち現代のパイロットにおいて必須とされる「エアマンシップ」を獲得するに至っていたのです。体系的な訓練もノウハウも何もないに等しいこの時代にです。

 平均余命半月という地獄のような空にさえ適応できた真のプロ・パイロットは、滋野のほかにはほとんど存在しません。フランスでもイギリスでもドイツでも、戦前世代はほぼ戦死。滋野のほかは、ほぼ「1年生」ばかりになっていたからです。フランス人偵察員たちは、誰もが滋野の機に乗りたがりました。滋野と飛べば絶対に生きて帰れることを知っていたからです。

自ら設計した飛行機に搭乗する滋野清武

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