「日本軍が上陸してくるぞ!」スピルバーグ作品の元ネタにもなった米本土パニック事件の顛末

太平洋戦争の初頭、ハワイ真珠湾攻撃を成功させ勢いに乗った日本は、アメリカ沿岸に潜水艦を派遣し、西海岸を何度も攻撃しました。そこで起こった一連の出来事は時を経てスピルバーグ監督の映画にもなっています。

その後も続いたアメリカ本土攻撃

 こうして生起した1942(昭和17)年2月25日の事件は「バトル・オブ・ロサンゼルス」、日本語に訳すと「ロサンゼルスの戦い」と呼ばれています。なお、ミステリーファンの間では、戦後の1947(昭和22)年に起こったロズウェル事件と絡めて、第2次世界大戦(太平洋戦争)中に起きた大規模なUFO事件としても知られています。

 もっとも、「ロサンゼルス・タイムズ」に掲載された発光体は、写真を加工した捏造との指摘があるので、真相はいまだ不明ではあります。

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フォート・スティーブンスに着弾した砲弾の跡を調べる兵士(画像:アメリカ陸軍)。

「バトル・オブ・ロサンゼルス」その後も旧日本海軍はアメリカ本土を攻撃しています。同年6月20日に伊26潜水艦が、カナダ南西部のバンクーバー島を砲撃しています。ここは太平洋に面した場所でアメリカ国境に近く、島内には無線方位探知局と灯台があり、それを狙ったものでしたが、砲弾が命中することはなく被害はありませんでした。

 翌21日夜には、今度は伊25潜水艦がオレゴン州とワシントン州の境を流れるコロンビア川の河口都市アストリアを砲撃しました。アストリアは少し内陸部に位置しており、砲弾は手前にあるアメリカ陸軍の沿岸要塞フォート・スティーブンスに着弾しています。要塞に被害はありませんでしたが、突然の砲撃でパニックになった兵士に負傷者が出ています。なお砲撃はごく短時間で終わったため、アメリカ軍は大型の要塞砲で反撃する間もなく、伊25潜水艦を取り逃しています。

 さらに伊25潜水艦は、同年9月に搭載している小型偵察機を用いて、オレゴン州の森林地帯を爆撃しています。同機は焼夷弾を二度にわたって投下しており、アメリカにとっては、20世紀における唯一の外国機による空襲でした。

 ゆえに2001(平成13)年9月11日に起きた同時多発テロは、伊25潜水艦による空襲以来の出来事として、アメリカでは受け止められています。

 ちなみに、映画『1941』は以上のようなアメリカ西海岸をはじめとする、当時の日本軍潜水艦の砲撃事件をもとに、三船敏郎演じる艦長が指揮する伊17潜水艦が、日米開戦直後のクリスマス前にロサンゼルスの街(目標はハリウッド)を砲撃しようとしたことで、アメリカ軍と地元住民が大混乱に陥る、というストーリーでした。

 アメリカ本土で現実に起こったのはシビアな混乱でしたが、映画ではそれをドタバタコメディに仕立てています。終戦から34年経った時代ならではの、一種のどかな「戦争映画」でした。

【了】

【写真】日本軍機か? UFOか?現地新聞が報じた「謎の発行体」ほか

Writer:

軍事雑誌や書籍の編集。日本海軍、欧米海軍の艦艇や軍用機、戦史の記事を執筆するとともに、ニュートン・ミリタリーシリーズで、アメリカ空軍戦闘機。F-22ラプター、F-35ライトニングⅡの翻訳本がある。

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