公道レースは何をもたらす? 「モータースポーツ振興法案」とは マラソンOKレースNGの矛盾

公道レース開催のメリットとは?

 また、中村氏は法律の成立には、モータースポーツへの理解が不可欠だと訴えました。

「自分でサーキットを作ってつくづく実感するのは、米国や欧州で同じことをやったら、大いに賛同を得て喜んでくださる。だけど、日本にはモータースポーツになじみのない人たちがずいぶんいて反対の人もいる。そのへんの理解をどう得るか。それができれば公道ラリーも本格的なレースができるのではないかと思います」

 MS振興法案の基本施策では、レースの主催者に対して「住民その他の地域の関係者の理解と協力の確保」を求めています。モータースポーツの環境の整備は、単にレースがしやすくなるだけではなく、地域の活性化や観光振興に役立つことから一部の地方自治体でも期待されています。

 2020年には、島根県江津市で日本初の市街地公道レース「A1市街地グランプリ」も、既存の法の枠組みのなかで開催され成功を収めました。地元有志が企画し、関係各所へ粘り強く交渉し実現したものでした。主催者側は山陰のいち都市に、約4億円の経済効果をもたらしたとしています。

Large 220404 ms 02

拡大画像

愛知県と岐阜県で開催予定だったラリージャパンは2年連続で中止になったが、愛知県豊田市にある中央図書館などが入る公共施設ビルには、いつまでもWRC応援ボードが張り続けられた(中島みなみ撮影)。

日本開催ラリージャパンを後押しか

 2022年11月に愛知県と岐阜県で開催予定のラリージャパンは、世界ラリー選手権(WRC)のひとつで、一部公道を使った約300kmのレースです。2020年に開催予定でしたが、新型コロナの影響で中止、2021年も同様に中止を余儀なくされました。主催者「サンズ」の鈴木賢志代表はこう話します。

「2020年、2021年の中止になった期間を使って、地域へのご説明をいたしました。地域住民の理解、法制度、訪日外国人の課題が解決されれば実現できます」

 さらに、国際レースとして地域の活性化や観光振興も期待されています。

「海外からドライバーメカニックら関係者500人から700人程度が来日の予定です」(前同)

 法案は、安全運転技術の習得や交通安全思想の普及を図ることも明記しています。策定から7年、今度こそ法案を国会へという機運が高まります。

【了】

【写真】元女優の国会議員も激論「モータースポーツ議連」の面々

Writer: 中島みなみ(記者)

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

1件のコメント

  1. 大倉聡氏の事案が報道されていながらこの記事ですか……?