自動車ブランドSAABなぜ消えた? アカデミー賞で話題 車が有名すぎる戦闘機メーカーの悩み

SAAB消滅(クルマの) いまは?

 GMの完全子会社となったサーブ・オートモビルは、二代目サーブ900と同様、オペルの乗用車の技術を流用した「9-3」と「9-5」を開発しますが、いずれもヒットには至らず、親会社のGMが2009(平成21)年に破綻したことから、採算性が低かったサーブ・オートモビルはオランダのスパイカー・カーズに売却されました。

 スパイカー・カーズの傘下に入って以降もサーブ・オートモビルの経営は安定せず、2011(平成23)年12月には破産申請の申し立てにまで追い込まれます。翌2012年に中国系企業のナショナル・エレクトリック・ビーグル・スウェーデン(NEVS)がサーブ9-3の知的財産権と工場などの資産を買収し、同社は2013(平成25)年からサーブ9-3を製造していましたが、2016年にブランドをNEVSに変更したことで、自動車ブランドとしてのサーブは完全に消滅してしまいました。

 サーブ・オートモビルを売却して以降のサーブは、陸上自衛隊に84mm無反動砲として採用された「カール・グスタフ」などを手がけていた、スウェーデンの防衛企業であるボフォースの事業の一部や、海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦にスターリング機関の技術を供与した造船メーカーのコックムスなどを買収し、世界でも屈指の総合防衛・セキュリティ企業となっています。

 ただ、「サーブ=自動車」というイメージは依然として根強く存在しているようで、筆者がスウェーデンのサーブの施設を取材に訪れた際に対応してくれた担当者は、「近所の人にサーブで働いていると話すと、いまだに『自動車作っているんですか?』と言われちゃうんだよね」と苦笑していました。

【了】

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Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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