使うはどちらも「やられメカ」ことT-72戦車 ロシアとウクライナ、勝機はどちらに?

カギ握るのはウクライナ軍の練度とヤル気

 加えて現地や海外からの情報を信じるなら、戦意においてはウクライナ側が圧倒的に高く、乗員の練度においても、この戦意の高さが操作習熟に好影響をもたらしていることは想像に難くありません。

 一方で、ロシア側では無傷の乗車を放棄して戦車乗員が逃亡するケースがしばしば生じていると伝えられます。さらには部隊の戦友多数が戦傷死したことに怒ったとある戦車乗員が、責任者である大佐クラスの機甲部隊長を戦車で轢いて病院送りにする事件が起こるなどしており、それらを鑑みると少なくとも戦意においては高いとはいえないようです。

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ウクライナ陸軍のT-72戦車(画像:ウクライナ国防省)。

 とはいえ、ウクライナは多勢に無勢の「無勢」と言わざるを得ない状況です。要請に応えてポーランドやチェコがT-72系のMBTを供給してくれているとはいえ、ウクライナ軍のT-72系の保有数がロシア軍よりも少ないのは間違いありません。

 しかし現代戦では、まずは命中精度に優れた対戦車ミサイルや精密誘導砲弾による砲撃などで敵の戦車を叩いて数を減らし、その後、第2次世界大戦時のように「戦車には戦車をぶつける」という戦い方が、ひとつの戦闘における最後の「仕上げ」となる傾向が高いといえるでしょう。そう考えると、数的に劣勢のウクライナ軍側のT-72部隊にとっても、勝機はあるのではないでしょうか。

 さらに、前述した練度と戦意の面を加味した場合、ウクライナ軍のT-72がロシア軍のT-72に劣っていることは決してなく、場合によっては上回っている可能性も否定できないと筆者(白石 光:戦史研究家)は考えます。とはいえ、いわば「姉妹」ともいえるロシアのT-72改良型と、ウクライナのT-72発展型、両者の雌雄が決するのは、もう少し先になりそうです。

【了】

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Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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コメント

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1件のコメント

  1. ウクライナ軍であれロシア軍であれ、この記事に面白おかしく書かれている戦車には人間が乗っており、「ジャックインザボックス」の状態の戦車の中ではかなりの確率で人が死んでいるものと思われます。
    「単に海外で言われていることをまとめただけ」と言われるかもしれませんが、それならば人の生命が失われている状況を指して「バネでビヨヨ~ン」などという表現を使うでしょうか。
    本記事を執筆された白石氏と、これを掲載するメディアの良識を疑います。