使うはどちらも「やられメカ」ことT-72戦車 ロシアとウクライナ、勝機はどちらに?

びっくり箱と揶揄されてしまったT-72シリーズ

 T-72は、旧ソ連の友好国向けの供与戦車としてもさまざまな国に輸出されており、1980年代初頭、中東地域で何度か実戦に投入された車体は、いずれも輸出用の性能制限仕様(いわゆるモンキー・モデル)であったものの、当時のイギリス製「チーフテン」やアメリカ製M60といったMBTに対して善戦し、一定の評価を得ています。

 ところが、一転して湾岸戦争では、イギリス製「チャレンジャー」やアメリカ製M1「エイブラムズ」といった性能格差の大きい西側製MBTとの交戦で一方的に撃破されてしまい、「やられメカ」呼ばわりされる結果となりました。

Large 220506 tank 02

拡大画像

撃破された際、車体から砲塔が外れてしまったロシア軍のT-72B戦車(画像:ウクライナ国防省)。

 特に、省人力化のため装填手を減らすべく自動装填装置を導入し、砲塔直下の車体底部へ円盤状に主砲弾薬庫を設けたことにより、被弾時にこの弾薬庫が誘爆して砲塔が吹き飛ぶ事例が多発したことが、世界中にネガティブ・イメージを植え付ける結果を招いてしまいました。

 砲塔が車体から外れて宙に吹き飛ぶ様が、箱からバネでビヨヨ~ンと飛び出す道化師やお化けのフィギュアなどにイメージ的に重なるとして、アメリカの戦車兵たちはT-72に「Jack in the Box(びっくり箱)」というあだ名を付けたのです。

 この「やられメカ」としてのイメージがあまりにも強烈だったことにより、T-72シリーズは今となっては、その発展型でも西側の最新鋭MBTには歯が立たないと広く思われているようです。しかし、同じT-72同士が戦うとなれば、話は全く違ってきます。

 T-72を保有する国によって、あるいは型式の違いによって性能に差が生じるケースもとうぜんあるでしょうが、現状の本車の改良発展型で、そこまで決定的に性能が向上したモデルは存在していないようです。

 ゆえに「ハード」面での格差がそれほどない以上、乗員の練度と戦意(闘志)という「ソフト」面が、事実上の勝負のカギとなります。

【戦車で愛犬とツーショットも】ウクライナ&ロシアが運用するさまざまな戦車

テーマ特集「ロシア軍のウクライナ侵攻 最新情勢 戦争はどうなっているのか」へ

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

1件のコメント

  1. ウクライナ軍であれロシア軍であれ、この記事に面白おかしく書かれている戦車には人間が乗っており、「ジャックインザボックス」の状態の戦車の中ではかなりの確率で人が死んでいるものと思われます。
    「単に海外で言われていることをまとめただけ」と言われるかもしれませんが、それならば人の生命が失われている状況を指して「バネでビヨヨ~ン」などという表現を使うでしょうか。
    本記事を執筆された白石氏と、これを掲載するメディアの良識を疑います。