近鉄が開発「二刀流集電」実は歴史アリ 過去方式とどう違う? 実用化で各地へ広がる“直通”可能性

実は過去にもあった「ハイブリッド集電方式」

 ところで、架線集電と第三軌条集電の両方に対応する車両は過去にもありました。1912(明治45)年に信越本線の横川~軽井沢間で採用された、EC40形電気機関車とED42形電気機関車です。この区間はトンネル断面が小さく、電化する際に架線を設置する十分な余裕高さがなかったため、第三軌条方式になりました。

 海外では1987(昭和62)年にイギリス国鉄が導入した319形電車、1993年に英仏海峡トンネルを経由する国際特急「ユーロスター」に導入されたイギリス国鉄373形電車で実績があります。イギリス南部などヨーロッパでは元々、架線や架線柱により景観を損いたくないという理由で第三軌条方式が採用されていました。しかし「高速運転に適さない」という欠点から新ルートは架線集電方式で作られたため、地域で集電方式にバラツキが生じていたのです。

 さて、これらの先達と近鉄の集電装置の違いは「集電靴の格納」です。第三軌条方式は走行用の線路の外側にあるレール「第三軌条」から電気を受け取るために、集電靴という器具が取り付けられています。集電靴は車体の幅より外側にはみ出す形で取り付けられています。単純に考えれば、パンタグラフと集電靴の両方を取り付けて、それぞれの電圧に対応可にさえすれば、架線集電区間と第三軌条区間を直通できます。

 しかし、近鉄奈良線では「集電靴のはみ出し」が問題になりました。架線集電の奈良線は線路の近くにプラットホームの構造物、標識、信号設備などがあり、外にはみ出した集電靴が接触するおそれがあります。それらの障害物の多くは簡単に撤去・移設できないため、逆転の発想で「集電靴を自在に引っ込められる構造にする」というアイデアが出されました。

 集電靴を引っ込める方法は「内側にスライドさせる」「前後方向に折りたたむ」「跳ね上げるように折りたたむ」などの方法があります。この中で、必要な強度を保ち、他の機器に支障せず、メンテナンス性を高める方法として「跳ね上げるタイプ」が採用されました。

 ただし、単純に上へ折りたたむだけでなく、車体の幅の内側に収める必要があります。そこで近鉄は「支点を作り回転して上げる」「支点を上へ移動して上げる」「支点を内側に移動して上げる」「集電靴を内側にスライドさせてから上げる」などの方式を考案し、特許出願しました。出願は2020年1月29日、公開日は2021年8月10日です。この時点でも話題になりました。

【「可変集電」で実現可能!? 全国の「相互直通しそうな路線」】

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コメント

1件のコメント

  1. 今回の記事でも他の記事でも触れていないが
    近鉄の21m車が地下鉄に入るは不可能だろう…
    逆の 地下鉄サイズの車が近鉄線に入るなら
    小さい方に合わせれば簡単ではあっても
    編成としての収容力 ホームドア対応 などはどうするのか…

    東山線と近鉄名古屋線?
    16m程度で車体幅も狭い東山線車が近鉄名古屋線に入っても……

    銀座線と井の頭線?
    16×6 20×5…
    長さこそ少し短い程度だが車体幅の違いを含めれば収容力は7~8割程度に落ちる

    夢は膨らんでも悪夢しか見えてこないな…