近鉄が開発「二刀流集電」実は歴史アリ 過去方式とどう違う? 実用化で各地へ広がる“直通”可能性

近鉄が第三軌条と架線の両方から集電できる装置を開発し、これまで不可能だった路線間の直通を実現させようとしています。異なる集電方式への対処は、実は昔から行われてきました。しかし今回は何が違うのでしょうか。

他の鉄道会社も利用できるか

 この技術は他の路線でも応用できるでしょうか。相互直通は主に「集電装置」「軌間」「電圧」「信号システム」「車両建築限界」を一致させる必要があります。「車両建築限界」は小さい方に合わせれば解決ですね。「電圧」「信号システム」は両方の路線の機器を搭載すれば解決。「集電装置」も今回の新技術で解決しそうです。

 あとは「軌間(線路幅)が同じ」という条件です。京成電鉄は今から約60年前、都営地下鉄や京急と相互直通するために全線の軌間を変更したことがあります。しかし現在は工事費用も莫大になり、工事に伴う長期運休も難しい状況です。

これらを踏まえて、集電方式の問題を解決できれば、相互直通ができそうな路線を探してみました(いずれも地下鉄が第三軌条、もう一方が架線集電。いずれも軌間1435mm)。

・横浜市営地下鉄ブルーライン~京急電鉄本線

 実現すれば、三浦半島と新横浜駅が直結します。直通用の連絡線が設けられるのは、上大岡駅付近でしょうか。

・名古屋市営地下鉄東山線~近鉄名古屋線

 実現すれば、伊勢直通どころか、大阪・名古屋の地下鉄同士の直通も見えてきます。八田駅付近に連絡線を建設すれば可能。栄など名古屋中心街への直通は、近鉄にとっても念願かもしれません。

・大阪メトロ谷町線~京阪電鉄本線

 守口(守口市)付近~関目高殿(関目)付近で線路が近接しており、連絡線で接続しやすくなっています。京阪電車にとっては長年悲願であった梅田駅直通のチャンスであるばかりか、大阪市南部のターミナル駅・天王寺への乗り入れも見えてきます。

・大阪メトロ四つ橋線~阪急神戸線・京都線・宝塚線

 四つ橋線を阪急十三駅へ延伸する「西梅田・十三連絡線」構想があります。これをさらに拡張し、直通運転すれば、大阪南港~京都のアクセス路線としての可能性も出てきますね。

・大阪メトロ千日前線~阪神電鉄本線

 野田(野田阪神)付近で連絡線を作れば可能。ただし阪神なんば線と競合します。

* * *

 なお、近鉄は軌間を可変にするシステムの開発構想もあります。合わせて採用すると、東京メトロ銀座線と京王井の頭線、大阪メトロ御堂筋線と南海高野線、大阪メトロ御堂筋線と泉北高速鉄道、といった直通も可能です。夢はさらに膨らむばかりです。

【了】

【「可変集電」で実現可能!? 全国の「相互直通しそうな路線」】

Writer:

乗り鉄。書き鉄。ゲーム鉄。某出版社でゲーム雑誌の広告営業職を経て独立。PCカタログ制作、PC関連雑誌デスクを経験したのち、ネットメディアなどで鉄道関係のニュース、コラムを執筆。国内の鉄道路線踏破率は93パーセント。著書に『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。日本全国列車旅、達人のとっておき33選』(幻冬舎刊)など。

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コメント

1件のコメント

  1. 今回の記事でも他の記事でも触れていないが

    近鉄の21m車が地下鉄に入るは不可能だろう…

    逆の 地下鉄サイズの車が近鉄線に入るなら

    小さい方に合わせれば簡単ではあっても

    編成としての収容力 ホームドア対応 などはどうするのか…

    東山線と近鉄名古屋線?

    16m程度で車体幅も狭い東山線車が近鉄名古屋線に入っても……

    銀座線と井の頭線?

    16×6 20×5…

    長さこそ少し短い程度だが車体幅の違いを含めれば収容力は7~8割程度に落ちる

    夢は膨らんでも悪夢しか見えてこないな…