21世紀の砲兵部隊になぜ気球? その軍事利用の歴史 始まりは18世紀フランス革命戦争!

空を飛ぶ鳥の目線を得て、戦争は大きく変容しました。18世紀の登場以来、戦場で使われ続ける気球の歴史を振り返りつつ、陸上自衛隊でいまなお運用される気球の役割について解説します。

正確無比な天気予報 ただしとってもピンポイント

 ラジオゾンデは、気球に吊るされて1分間に300mから400mほどの速度で上昇しながら、上空の気温、湿度、気圧などを観測したデータを無線送信機で送信し、ゾンデ追跡装置のアンテナが正確に追尾指向して受信します。20分後に2基目のラジオゾンデを揚げ、2基のデータを合成して気象報を作成します。

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演習場に展開したゾンデ追跡処理装置。2基のアンテナが上昇するラジオゾンデを追尾指向する(画像:月刊PANZER編集部撮影)。

 気球は約90分で上空30km程度に達すると、周囲の気圧が低いため膨張が限界に達して破裂し、ラジオゾンデはパラシュートで地上に降下します。ゆっくり降下しますので人や物を傷つけたりすることはほとんど無いそうですが、不審物扱いされないようラジオゾンデのケースには「本機を拾得された方は御連絡下さい。陸上自衛隊」などの文言が書かれています。もっとも、多くは上空の偏西風で流され太平洋に落下するようです。

 陸上自衛隊でもこのように定期的に気象観測を続けデータを蓄積させており、この作業は砲撃の精度を上げる重要なものです。

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定時に浮揚させる。この時は18時だった(画像:月刊PANZER編集部撮影)。

 砲兵とは、戦力化するには気象観測までやらなければならない、時間とお金が掛かる贅沢な兵科です。練度の高い砲兵は、そのぶん味方地上部隊からは「戦場の女神」と呼ばれて頼りにされています。さらに気象観測データを生かした陸自観測中隊の「天気予報」は地元密着の精緻さを誇り、現場ではメディアで流れる天気予報より頼りにされています。

 ウクライナでは高機動ロケットシステム(HIMARS)の戦果が喧伝されています。GPSで誘導されるロケット弾は確かに高精度で、気球を上げるような手間は必要ありません。しかし現在供与されている12基と20日に発表された追加4基の計16基程度の供与数では、投射できる火力量はごく限られ、戦局全体に決定的な影響を与えるとは思えません。

 前線で戦うウクライナ地上部隊にとって「戦場の女神」は数の多い大砲であり、女神が力を発揮するのに必要なのは大砲の性能や大きさ、砲弾の数ばかりではありません。

【了】

※一部修正しました(7月27日12時06分)。

【画像】火気厳禁! な専用の収納天幕など陸自の観測気球をもっと観る

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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