ウクライナであまり聞かない「海軍」の実力は? まともな軍艦ないのに“艦隊再編”報道の実際

焦点となるクリミア半島セバストポリ軍港

 目下、ウクライナはなんとしてもクリミア半島を奪回すると宣言しています。実際にそれが可能なのかどうか、現状に即して分析してみましょう。

 クリミア半島を奪回するために避けて通れないのが、ロシア黒海艦隊の母港であるセバストポリの攻略です。これまでウクライナ軍はセバストポリ港にいるロシア艦隊をミサイル攻撃していません。

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第2次大戦時、ドイツ軍に破壊されたセバストポリ要塞の30cm連装砲塔。第1次大戦時のガングート級戦艦の主砲を転用したもの(画像:ドイツ連邦公文書館)。

 セバストポリは、直線距離でクリミア半島の付け根に近いウクライナの軍港オチャコフから約270km、6月末にロシア軍が撤退したズミイヌイ(スネーク)島からは274km、オデーサからだと約300kmです。ウクライナ海軍の切り札的存在といえる「ネプチューン」地対艦ミサイルの有効射程は約280kmなので、なんとか攻撃範囲に入っています。

 ところが、ロシアはこれに対抗策を打ち出していました。ウクライナが指摘するところによると、2022年3月以降、ロシアはAIS(船舶自動識別装置)を切った複数の民間船を軍艦の周りへ盾のように配置するようになったとのこと。このようなやり方でセバストポリにいる自軍艦船を温存しているといいます。これに関してウクライナはロシアを非難していますが、AISは国際航行する排水量300トン以上の船舶と、他国間との航行をしない500t以上の船舶に設置義務があり、軍艦は免除されています。ロシアはこの国際規則を利用して民間船と軍艦をAISで識別できなくしています。

 なお、AISが発する電波は人工衛星でも受信できます。この情報が活かされたのが3月24日にアゾフ海のベルジャンシク港でミサイル攻撃を受け沈んだロシア海軍揚陸艦「サラトフ」でしょう。撃破された際の状況を鑑みると、偵察衛星などから得た情報を総合して行われたピンポイント攻撃だったとみられています。

【写真】劣勢を強いられるウクライナ海軍の艦艇

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