ボーイング機もエアバス機も…世界中の飛行機を飛ばしている3大エンジンメーカーとは
自動車とは別会社 ロールス・ロイス
企業名を聞くと自動車メーカーとしての印象が強いロールス・ロイスは、航空機エンジンメーカーとしても歴史が古く、1914(大正3)年に初めて航空機エンジンを開発し、スーパーマリン「スピットファイア」戦闘機に搭載された「マーリン」エンジンも同社製でした。
ジェットエンジン開発にも戦中から力を入れており、現在もジェットエンジンの主流である「軸流式」とは違うタイプの「遠心式ジェットエンジン」を研究し、戦後に「ニーン」という遠心式ジェットエンジンを開発します。
ロールス・ロイスは1971(昭和46)年、自動車の技術革新の失敗や旅客機用の新型エンジン「RB211」の開発コスト増大で一度、経営破綻し国有化されます。この際に自動車部門と航空機エンジンの部門は切り離されました。自動車部門はヴィッカースへ売却され、紆余曲折の後、2022年現在はBMWの傘下になっています。一方、国家戦略上の重要事業である航空機エンジン部門は国営企業として存続しました。
やがてRB211を完成させ、その本格的な供給に動くものの、1980年代当時はGEとプラット・アンド・ホイットニーの2社にほとんどシェアを奪われた状態でした。1987(昭和62)年にサッチャー政権下で再度、民営化され、起死回生のエンジン「トレント」シリーズを生み出します。トレントシリーズはエアバスA340、A380などに搭載され、現在も世界で1万3000基超が運用されており、ワイドボディ旅客機向けエンジンでは受注残の50%超を占めています。
実は「ハリアー」の「ペガサス」エンジンや「オスプレイ」のターボシャフトエンジンも同社製です。また、同社も前出した2社と同じように自衛隊機および海上保安庁機の主要なエンジン供給企業で、たとえばYS-11やUS-2飛行艇のターボプロップエンジンは同社製です。
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特許の塊であるジェットエンジンは、全く新しいものを開発するのが困難で、かつては3社だけで全航空機エンジンのシェア60%以上を占めていました。しかし現在、低環境負荷技術の面での特許の獲得が旅客機用ジェットエンジンビジネスでは重要とされているなか、フランスのスネクマとGEの合弁会社であるCFMなどが3社に続く形で業績をのばしています。日本のIHIも国産エンジン開発を進めており、近い将来3大メーカーの優位は揺らぐことがあるかもしれません。
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Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。
日本の国産エンジンに頑張ってほしい。