「一匹狼」「孤高のパイロット」はいらない!? 空自F-2部隊指揮官に聞いた多国間訓練の実情

パイロットに重要なのは「コミュ力」

 さらに唯野1佐は次のようにも言っていました。

「訓練自体は我々が国内でやっていることと本質的な部分では大きく変わりません。しかし、規模の面では数十機もの機体が参加する多国間訓練は日本ではなかなか行えないため、貴重な機会といえます。この訓練での我々の目的は、自分たちの技量の向上だけでなく、オーストラリア空軍との相互運用能力を高め(オーストラリア空軍の空中給油機からの空中給油ミッションも行われたという)、また参加各国空軍との相互理解を深めることにあります」。

Large 220908 f2 03

拡大画像

F-2戦闘機の尾翼に描かれた兜武者。第3飛行隊のシンボルだが、海外メディアのカメラマンたちは「サムライ」と呼んでいた。「ブシドー」ではない(布留川 司撮影)。

 本訓練では各国のパイロットや整備員たちが共同で任務を遂行するだけでなく、飛行以外での交流も普通に行われており、基地では食堂や休憩中などに、各国の隊員たちが親しく会話をすることで親睦を深めているそうです。国際的な安全保障の枠組みが求められている昨今ですが、その土台となるのは、こうした隊員同士の、いわば草の根の繋がりだといえるでしょう。

 戦闘機パイロットというと、映画などの影響から「ただ勝利を追求する孤高の存在」というイメージを持たれることもあります。しかし、実際の戦闘機パイロットに求められるのは、自身の操縦技量はもちろんのこと、それをどのように活用するべきかという大局的な視点。そして、同じ空の世界で活躍する人々として、他国間との繋がりを作るコミュニケーション能力なのかもしれません。

【了】

【豪州の空を飛ぶ空自機】オーストラリア空軍のF-35Aとコラボする空自F-2戦闘機ほか

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。