渋谷駅の顔だった「地下鉄が地上3階から発車するビル」なぜできた? 解体直前~現在の記録

80年前の構造体、姿を現す

 西館は2020年3月31日に東横店が閉店し、3階以上は立入禁止となりました。一方、渋谷マークシティや京王井の頭線方面と、渋谷ヒカリエや山手線方面との連絡のため、1~2階部分は通路として往来できました。なお、西館2階には旧玉電乗り場と向い合せになる位置に、山手線外回りホームと直結したJR玉川改札があり、玉川改札へ行くにも館内を通行する必要があったのです。

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玉川改札最後のとき。JR山手線の外回り最終電車が到着したところ。降車客が改札を通った時点でこの改札口は役目を終えた(2020年9月、吉永陽一撮影)。

 西館と南館の解体は2020年10月に始まりました。仮設の迂回連絡通路が建設されたため、通路として往来できたのは9月25日まででした。

 日付が変わった9月26日午前0時50分。山手線外回りの最終電車が去って玉川改札は使用停止。同時に、西館は通路としての役目も終了しました。0時57分にシャッターが降り、最後の瞬間が訪れます。玉電ビルの建設から82年間活躍したターミナルビルは、ここに使命を終えたのでした。

 約3時間半後の午前4時30分。仮設通路「しぶにしデッキ」が供用開始されました。デッキは京王井の頭線ならびに渋谷マークシティと駅を結ぶ連絡通路で、解体される西館の周囲をぐるっと迂回する形状となっています。

 それから2年。2022年は西館が解体されていき、渋谷駅は今まで見たこともない姿となっています。8月の段階では、銀座線の回送線路を覆う部分が残されていました。そして開通当時の躯体が現れ、リベット打ちの鉄筋やタイル張りの柱が露出しましたが、2週間ほどで工事囲いされています。一瞬だけ現れた姿は、仮屋上時代の姿を彷彿とさせてくれました。

 西館の解体は銀座線の回送線を生かしたまま、山手線と隣接した場所で進行します。跡地には銀座線の回送線を覆い被せる形で、「渋谷スクランブルスクエア中央棟・西棟」などからハチ公広場へ続く大屋根の階段と通路が建設されます。

 完成パースを見ると、回送線は箱状に覆われるため、おそらく現在残る躯体も解体されると思われます。完成は2027年度。既に浦島太郎になりそうですが、渋谷駅はまだまだ激変していきます。

【了】

【写真】露出した80年前の躯体 ほか、トマソン的空間や古い鉄扉

Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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1件のコメント

  1. 南北線や都営三田線の品川駅も高架構造でええんちゃう?