ウクライナに「冬将軍」もうすぐ到来 秋雨から泥濘→凍れる大地へ ロシア軍どうする?

力で押せなくなるため、エリート部隊の出番か?

 しかも酷寒の環境下では、赤外線暗視装置に代表される歩兵が携行できる軽便な視察機材で、車両類のエンジン熱やその排気、陣地内の暖房器具や焚火、はては人間の体温や煙草の火といった熱源を容易に見つけ出すことが可能です。

 そのため、「ジャベリン」対戦車ミサイルのような歩兵携行型火器を用いてのピンポイント攻撃を、車両だけでなく陣地などまで含め実施しやすくなるほか、スナイパーによる目標確認と狙撃も行いやすくなるでしょう。

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フランスからウクライナに提供されたトラックタイプの「カエサル」装輪155mm自走榴弾砲(画像:ウクライナ国防省)。

 もちろん、戦車も戦闘に参加するでしょうが、酷寒の積雪中では「攻める戦車」よりも「守る戦車」のほうが圧倒的に有利です。

 ゆえに、もしかしたら積雪後の凍結したウクライナの大地での戦いは、従来の戦車をはじめとする戦闘車両主体ではなく、雪中を音もなく浸透して戦うハイテク装備を携行したエリート歩兵部隊の活躍の場となる可能性もあると筆者(白石 光:戦史研究家)は考えます。このような「人間力」主体の戦いがメインになると、個々の兵士の戦意が高い側が有利なのは当然といえるでしょう。

 とはいえ、大きな懸念もあります。将兵が防寒のため脆弱な仮設陣地にこもり、積雪の影響で車両部隊などが集中した状態になっていると、戦術核兵器がより効果的に使えるのです。ただ、筆者のこのような推察が杞憂で終わってくれることを祈っています。

【了】

【写真】泥濘の中を進むウクライナ軍機械化部隊ほか

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Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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