見づらくない? 車のサイドミラー位置が“後ろへ下がってきた”理由 メーカーでも違いが
単純明快な安全対策 でも欧州では…
実は、ドアの付け根、Aピラーのすぐ下にサイドミラーがあると、斜め前に運転手が見えない死角が生じてしまうのです。サイドミラーの視界をよくしようと、ミラーを大きくすればするほど、斜め前の死角は大きくなります。交差点を曲がった先に横断歩道があるようなシチュエーションでは、サイドミラーが非常に邪魔になってしまうのです。
そこでサイドミラーを下げるとどうなるか。Aピラーと、下がったサイドミラーの間から向こうが見えるようになり、死角を減らすことができるのです。安全性を気にする自動車メーカーとしては、お金もかからないうえに安全性も高まるという、メリットだらけの手法となるのです。
そうした手法を採用するクルマは2000年代にちらほらと登場しました。ホンダの「フィット」は2001(平成13)年の初代からAピラーの付け根から後ろにミラーが設置されていましたし、「プリウス」も2003(平成15)年登場の2代目より同様の手法を採用。2010年代に入ると、マツダやスバルのほとんどのモデルは、サイドミラーがAピラー付け根ではなく、ドアになっています。
しかし、特に欧州車はAピラー派が、まだまだ主流のような状況です。
BMWは、そのほとんどのモデルがAピラーの付け根にサイドミラーがあります。メルセデス・ベンツは電動車であるEQシリーズの一部がドアについていますが、CクラスやEクラス、Sクラスといった伝統的なセダンはすべてがAピラーの付け根です。また、プジョーやシトロエンもAピラー付け根が多数派です。フォルクスワーゲンは、「ゴルフ」や「パサート」がドアで、「ポロ」や「T-Roc」はAピラー付け根で、半々くらいという状況です。
ちなみに、トヨタで言えば、「ヤリス」と「スープラ」は、いまだにAピラーの付け根にサイドミラーがあります。ヤリスは欧州で人気のモデルですし、スープラはBMWとの共同開発車。日系モデルでも、欧州向けであれば、Aピラーの付け根にあるモデルが残っているのです。
欧州車でも新しいモデルほど、Aピラーからドアへサイドミラーの位置が移行してきてはいるものの、Aピラーの付け根のモデルが多いのは、デザイン優先であったり、伝統的な配置を重視するという欧州ならではの特徴が理由かもしれません。
【了】
Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。
やっぱりフェンダーミラーに戻したほうがいいのでは?狭い道とかで道の端いっぱいによらないから対向車がすれ違うのに困る。日本はまだまだ狭い道が多いので。車メーカーも、フェンダーミラーとドアミラー両方選べる様にしたら。
今時死角駆逐には電子化(カメラ)が一番、それより柱等に挟まれた狭小窓の方が問題では。