日本では体験できない!「列車に乗ったまま船へ」 鉄道連絡船の車両航送

実はほとんどが作業時間

 出港から約20分、もう対岸のメッシーナ駅構内外れに着岸しました。本当に両駅は目と鼻の先にあり、人生初の鉄道連絡船と車両航送体験はあっけなく終了です。

 こんなに短ければ橋を架ければと思うのですが、計画はあったものの中止になったとか。理由は、橋脚の支間(スパン)が3kmを超えて世界最長となるものの、この一帯は地震が偶発するためそれに耐えられるかの懸念、巨額な建設費などです。

 甲板にいた乗客は、船が着岸する前に列車内へ戻っていました。人々の後に続き、あとは車内で船から出されるのをひたすら待つだけ。ちなみに時刻を確認したところ、ヴィラ・サン・ジョパンニ駅発4時25分、メッシーナ駅着6時10分。航行時間を除くと、そのほとんどが航送作業時間となります。出港前の積み込み作業を体験すると、入港から駅の出発までも時間がかかりそうだ……。気長に待ちましょう。

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ヴィラ・サン・ジョパンニ駅の岸壁に着岸するところ。青函航路とは逆で、V字となった岸壁に船首から突っ込む形で入港する。船首のハッチが開きかけており、そこから車両を出し入れする。この時点で客車へ戻らないと、列車はすぐに動いてしまう(2018年11月、吉永陽一撮影)。

 テルミニ駅から車両航送を体験できるのは、イタリア鉄道のアプリ「Trenit」によると、日中走行のIC723列車とIC727列車。寝台列車はIC notte1955列車と1959列車などです。ただし運休日や列車番号、時刻が変更されることもあり、またヴィラ・サン・ジョパンニ駅で船に乗り換えのパターンもあるので、乗車日は事前に確認するとよいでしょう。

 メッシーナ海峡の鉄道連絡船は、ここまで手間と時間をかけ、決して長くない距離を100年以上も航行しています。橋の計画は中止になっているので、しばらくは乗車したままの車両航送体験ができますね。シチリア島へ行く際は、鉄道連絡船も選択肢のひとつ。寝台列車だとなお楽しいです。

【了】

【写真】船の中に線路! 非日常「車両航送」体験

Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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コメント

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2件のコメント

  1. 2005年に乗ったよ!😋

  2. 私は、昭和26年の8月に宇高連絡船の車両航送で、予讃線から列車に乗ったまま宇高航路、宇野線、山陽
    線経由大阪梅田まで乗り換えなしで言った記憶があります。夏休みでしたが、船に閉じ込められた列車は
    暑くて大変でしたが、列車1両につき2~3本の氷柱が立てられて、乗客の皆さんが代わる代わる手拭い
    を押し当てていましたよ。車両航送は上り下り各1列車のみ運行で日付の変わった深夜に乗車するのが難
    でしたが、連絡船の乗り換えも大変でしたから楽ちんな面もありました。ことに宇野港では第一桟橋に着
    いた場合、乗車するホームが改札口近くの時は200m以上走って乗り換えるのは辛いものでした。
    母の姉や従姉妹が京阪神に住んでいましたので、毎年夏冬休みに行っておりましたから、列車の旅の記憶
    は沢山あります。