空自が「航空宇宙自衛隊」に 世界では当たり前な「宇宙軍」の実態 宇宙戦の日は近い?

一歩先行く米中の宇宙担当軍

 アメリカは、さらに進んで空軍とは別の独立軍種として宇宙軍が組織されています。ゆえに陸海空3軍と海兵隊、沿岸警備隊に比肩する6番目の軍種といわれたりもします

 ただ、アメリカの場合は、軍種としての宇宙軍とは別に地域別統合軍として「宇宙コマンド(宇宙軍)」も編成されているのがポイントといえるでしょう。

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2022年12月現在、アメリカ宇宙軍のトップを務めるB.チャンス・サルツマン大将。宇宙軍の制服と制帽を着用している。独立軍種のため制服のデザインも空軍とは別(画像:アメリカ宇宙軍)。

 地域別統合軍とは、ハワイに司令部を置く「インド太平洋軍」や、ドイツのシュトゥットガルトに司令部を置く「欧州軍」などのように、特定エリアを管轄するため設けられるアメリカ軍内の司令部組織で、いうなれば前出のイギリス宇宙軍と同じ性格の組織です。

「宇宙コマンド」は陸海空の3軍および海兵隊、そして新編されたばかりの「宇宙軍」、この5軍種の軍人が宇宙関連部門の運用や弾道ミサイルなどの早期警戒、宇宙戦などに共同してあたっており、建物内などを見ると制服や迷彩服がバラバラなのが特徴です。従来は日本語に訳す際、こちらが宇宙軍(Space Force)と呼ばれていました。ただ、陸海空軍に並ぶ軍種として宇宙軍が発足したため、現在では区別する意味で「宇宙コマンド(Space Commando)」と訳されるようになっています。

 前出のアメリカ宇宙軍は、むしろ宇宙戦に対応する装備の調達や、マニュアルの策定、兵員の確保と教育訓練などをメインに行うため、役割的には宇宙コマンドが部隊を運用し(フォースユーザー)、そのために必要な人員や装備を宇宙軍が用意する(フォースプロバイダー)と表現できるかもしれません。

 こうしたことからアメリカは、イギリス軍モデルと、ロシア・フランス軍モデルの両方を持っているといえるでしょう。

 また前述したような「航空宇宙軍」や「宇宙軍」といった名称ではないものの、宇宙エリアを担う組織としては、中華人民共和国(中国)に「戦略支援部隊」があります。この組織は、陸海空軍に肩を並べる独立した軍種として設けられ、人工衛星の運用管理を担っているそう。ただ、それ以外にも電子戦やサイバー戦なども担当しているといわれており、その点ではアメリカ宇宙軍よりも扱うものの幅は広いようです。

 このように国ごとに、役割や思惑の違いから宇宙を担当する組織は様々ありますが、どの国の組織も、現状では弾道ミサイル防衛やロケット発射、人工衛星の運用管理を見据えて宇宙の名を用いているに留まります。SFの世界に出てくるような地球の外、いわゆる宇宙空間での積極戦闘を想定したものではありません。

 太陽系の外に出撃するような「宇宙軍」が設立されるのは、まだまだ先のようです。

【了】

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