シェアさせて下さい「核」を 冷戦下カナダの選択 政争の具になった搭載機「ヴードゥー」とは

1960年代初頭、東西冷戦の最前線であったカナダはアメリカと核シェアリングすることを決めます。それに伴い導入されたのが、CF-101戦闘機。同機を導入した結果、カナダでは政権交代まで起きたそうです。

自軍が核兵器使えるよう米兵常駐を認可

 カナダは核兵器を保有しなくとも使用できるようにするため、アメリカ軍兵士が国内各地に分駐することを認めます。

 こうしてアメリカ空軍第425弾薬支援隊の分遣隊がカナダ空軍の各基地に配置されることとなり、彼らが核弾頭の保管と管理を行うという役割分担が採られました。また、これにより、万一ソ連爆撃機もしくは国籍不明機が飛来した際は、NORADから迎撃命令が出されると、必要に応じてアメリカが保有するAIR-2「ジニー」核ロケット弾がカナダ空軍のCF-101戦闘機に直ちに搭載されるという体制が構築されました。

 とはいえ、カナダ空軍の兵士も核兵器を取り扱うにあたり必要な訓練を受けることになり、最終的にカナダ軍でAIR-2「ジニー」が実戦配備状態に至ったのは1965(昭和40)年6月のことだったと言われています。

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テキサス空軍州兵のF-101B「ヴードゥー」戦闘機(細谷泰正撮影)。

 こうして、カナダでは1984(昭和59)年までCF-101「ヴードゥー」の運用は続けられました。ちなみに、アメリカからカナダに提供されたF-101は全機が複座型ですが、それらは56機のCF-101Bと後席からも操縦が可能な転換訓練型の10機のCF-101Fという内訳です。

 1970(昭和45)年からは全機がアップグレードされ、機首に赤外線センサーを取り付け、火器管制装置は新型に換装されました。こうして能力を向上させたCF-101は、1980年代前半に後継機となるCF-188「ホーネット」が配備されるまでカナダの空を護り続けたのです。なお、防空の任から解かれたCF-101の一部は電子戦機に転用され、その後も運用継続。1987(昭和62)年にようやく全機が退役しました。

 米ソ超大国による核戦争が現実味を帯びていた1960年代、非核国カナダが仮想敵国からの核攻撃を阻止するために下した決断が、シェアリングによる核武装でした。幸い核弾頭を装備した空対空ロケット弾AIR-2A「ジニー」が実戦で使用されることはなく、ソ連崩壊とともに冷戦も終結しています。

 それから30余年、ロシア、中国、北朝鮮と、核兵器を誇示する複数の隣国に囲まれた日本は核攻撃の阻止について戦略の策定に迫られています。今日のわが国にとって冷戦下のカナダが下した決断は一つの教訓になるのではないでしょうか。

【了】

【F-4「ファントムII」の面影も 特別塗装のカナダCF-101戦闘機 飛行シーンも】

Writer:

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

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