日本にキター! 貴重な技術遺産「九五式軽戦車」20年ぶりの再来日に密着 操縦手の思いは?

日本に再び来た九五式軽戦車

 しかし、そうはいっても現場では、九五式軽戦車をコンテナから出すだけでも難儀していました。理由は操縦手の視界が極端に狭いことにあります。操縦席から見えるのは正面だけで、左右後方の様子はまったくわかりません。

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日本の埠頭に陸揚げされた九五式軽戦車(NPO法人 防衛技術博物館を創る会/布留川 司撮影)。

 今回は自走でコンテナから出して、運搬用のカーキャリアー(トラック)に積み込むだけですが、それでもドライバーだけで走らせるのは不可能です。そこで、スタッフ1名が前方に立って戦車を誘導していました。この誘導員は両手をバンザイするように高く上げて、手の平の動きで運転手に指示を出します。

 ドライバーの目の代わりとなる重要な役目ですが、傍目で見ていると、誘導員は慣れた手つきでスムーズに戦車に乗るドライバーに指示を出していきます。後で聞いたところ、この方はNPO法人の会員で、以前は陸上自衛隊で本物の戦車に乗っていた元自衛官とのこと。戦前の戦車を、戦後の戦車乗りが誘導するという不思議な縁を感じました。

 その後、九五式軽戦車は大型の車両運搬車に積載され、埠頭から静岡県の御殿場市まで陸送され、無事NPO法人が管理する保管施設にたどり着いています。そこは原則非公開の場所であり、来春に予定されているクラウドファンディング支援者を対象とした招待お披露目会までしばしの眠りにつくとのことでした。

 筆者はNPO法人の公式記録カメラマンとして小林氏のイギリス訪問と、今回の日本帰国作業に同行しましたが、正直に言えば最初は九五式軽戦車に対して人並み程度の知識しか持ち合わせていませんでした。しかし、イギリスで初めて動くこの戦車を見て以来、愛着は増すばかり。その一番の理由は、見た目やこの戦車の性能ではなく、初めて触った時の感触でした。

【写真】再び日本の地を走った九五式軽戦車の姿

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