東京BRTどうなる? 突然の「臨海地下鉄」構想に透ける都の思惑 “名ばかりBRT”は改善されるのか
「地下鉄つくります」宣言 本当の意図
国の審議会では浮上していたものの、都からは突然発表された「臨海地下鉄」構想。その有識者会議は都・関連省庁や学識者などで組織され、直通運転先として名前が上がるTX(つくばエクスプレス)をはじめとした鉄道事業者の姿はなく、まだ具体性を欠いたままです。
一方、晴海フラッグも建設が進んでいるものの、東京五輪の開催延期に伴って入居開始も2024年3月に延期された経緯があります。ここに限らず周辺のマンションでは賃貸収入を折り込んだ投機目的の物件購入も多く、購入者からの訴訟トラブルなども起こっています。街としての価値を下げないことが今後の課題でもあり、都からの突然の宣言は、開発を失速させないために
「地下鉄の整備に期待してください!」
という「何とかするからちょっと待って」的なメッセージに見えないこともありません。
仮に地下鉄が実現するとしても、この街で生まれた子供が成人するほど先の話です。「東京の新・ど真ん中」と謳った晴海フラッグを言葉通りの環境にするには、まず東京BRTに走行レーンやPTPSなどを整備して速達化し、停留所や乗り継ぎの改善を図ることで、たとえ20年弱の間でも持たせたいところです。
振り返れば、東京BRTも計画段階から「五輪開催の遅れ」「市場移転の問題による環2通りの整備遅れ」など、外部の要因に振り回されてきました。選手村を格安で売却し、いまの晴海フラッグを含む街づくりを担ってきた東京都が、入居する人のためにしっかりとフラッグ(旗)を振ることができるのでしょうか。
【了】
Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
コメント