ついに攻勢開始の「中国製旅客機」たち 世界を席巻できるのか? 独自路線ゆえ実用化に壁
型式証明だけじゃない「中国製旅客機」運航拡大のカギ
そして今後、中国のCOMACが欧米のメーカーからシェアを奪えるかどうかは、COMACが公共交通機関として、旅客機の運航に対し、高い安全を確保する意思を備えているか、というのもポイントになると考えられます。
たとえば空の世界の話ではないですが、2011年7月、中国は、浙江省・温州市で起きた高速鉄道の脱線事故現場で、事故車両を破壊し一時埋めて世界を驚かせました。原因をきちんと究明する姿勢があれば、有力な証拠である車両は破壊状況を把握するため保存し、原因究明の手掛かりにするのが当たり前であるにもかかわらずです。欧米や日本も含めた各国における公共交通の事故調査機関は、こうした態勢を築くのに長い年月をかけました。
COMACを中心にいわば国家一丸となって、開発から初飛行、実用化まで比較的短いスパンで新型機を作った中国ですが、安全運航確保への確固たる決意のほどは、いまのところ未知数です。技術力や販売力だけではない姿勢が中国に備わっているかは、今後2機種が、運航規模を拡大し、今後の販売機数を伸ばしていくうえで、世界的に注視していく必要があるかもしれません。
【了】
Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)
さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。
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