新型戦車KF51 最初の顧客はウクライナ? 強気発言が注目される独ラインメタル社の野望
ドイツのラインメタル社といえば、その戦車砲で界隈には広く知られ、自国はもとより各国の戦車メーカーとの協業も手広く商ってきましたが、ここにきて独自路線を歩もうとする動きが見られます。その先に何を見ているのでしょうか。
生産どころか認証もされていない戦車を供与?
ドイツの防衛関連企業であるラインメタルのアーミン・パッパーガーCEOは2023年2月初旬、ドイツ政府が承認すれば、ウクライナへ最新型戦車KF51「パンター」を供与する可能性があると述べ、戦車業界に波紋が広がりました。
KF51「パンター」は、2022年6月にパリで開かれた防衛装備展示会「ユーロサトリ2022」で初めて公開された、将来戦車のコンセプトモデルです。どの国から発注されているわけでもなく、メーカーの「夢いっぱい」のプライベートベンチャーで生産ラインもありません。それなのにパッパーガーCEOがウクライナへの提供の可能性をぶち上げたのですから、話題にならないはずがありません。
ラインメタルは、長い歴史を持つドイツの重工業メーカーです。製鉄、冶金の高い技術力を誇り、「レオパルト」シリーズやM1「エイブラムス」、日本の90式など、おもな西側戦車はラインメタル製の主砲を装備し、「西側の標準120mm戦車砲」ともいわれてきました。
ロシアによるウクライナ侵攻の最中に開催された「ユーロサトリ2022」では、以前はあまり目立たなかった主力戦車関連の展示が多く見られ、未来的な外見をまとった将来戦車のコンセプトモデルも展示されるなど、それまで繰り返されてきた戦車不要論にメーカーがキッパリと異議を唱えます。その中で、各メーカーの思惑も見え隠れしていました。
将来戦車として存在感を見せていたのが「MGCS(メイン・グランド・コンバット・システム)」です。ドイツのKMWとフランスのネクスター・ディフェンス・システムズの合弁会社KNDSが中心となって、ヨーロッパ標準戦車となるべく開発しているのがMGCSで、ラインメタルはそのプロジェクトにコンソーシアムメーカーとして参加しています。
このプロジェクトは、ドイツ政府がKNDSとシステムのアーキテクチャを定義研究する最初の契約を2020年5月に結んでおり、メーカーの独自研究という枠からはすでに脱した、一歩進んだ段階のものといえるでしょう。
ところが同じ展示会場において、ラインメタルが独自にKF51を発表したのですから、MGCSに参加する他社は穏やかではありません。
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