新型戦車KF51 最初の顧客はウクライナ? 強気発言が注目される独ラインメタル社の野望
強気のラインメタル 見据えるは「戦後」
KF51の供与をウクライナが歓迎することは間違いありませんが、しかしその前にドイツ政府の承認が必要ですし、その費用を出すのはドイツ政府です。
同じドイツの防衛メーカーであるKMWは、先述のようにKF51をラインメタルの背信行為として非難しています。KF51がもしウクライナに供与されて実戦や運用経験を積めば、製品としての力は向上し、MGCSの障害となることは目に見えているからです。KMWがドイツ政府に対しKF51を承認しないよう、妨害の働きかけをすることは明白です。
そもそもドイツ政府と防衛メーカーの関係も最近、悪化しています。KMWとラインメタルの合弁企業であるPSMの製造する「プーマ」歩兵戦闘車は昨年末、NATOの演習に参加していた車両すべてが故障して離脱するという失態を演じ、その新規調達が停止されるという事態に陥り、政府の信頼を失いました。
しかしラインメタルは強気です。1月にドイツ国防相へ就任したボリス・ピストリウス氏に対し、氏が防衛メーカーとの会談に入る前に、パッパーガーCEOは「砲弾増産のためドイツ東部のザクセン州において新しい火薬工場の操業を準備しているが、必要な7億から8億ユーロの投資はドイツ政府が負担しなければならない」と述べています。
実際には、ウクライナがKF51の最初の顧客になる可能性は低いかもしれませんが、この紛争によってヨーロッパの兵器市場が激変することは間違いありません。商機を狙って各国は動いています。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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