「ガンダム版61式戦車」なぜド派手なツイン砲塔なのか 実在MBTには採用例がないワケ

主砲2門あるメリットとデメリット

 61式戦車の150mmないし155mm砲は、現実世界における陸戦用車両でいうと、いくつか例外はあるものの、ほぼ自走砲の口径となります。そして、はるかに進歩しているであろう宇宙世紀の射撃システムであれば、砲の仰角を上げて曲射しても、充分な命中率を確保できると考えられます。

 砲の仰角を上げられるということは、射程距離も伸びるということでもありますから、自走砲の役割を兼ねることができます。仮想敵国が存在しない地球連邦軍であれば、多種多様な兵器を保有する必要はなく、近似する性格の兵器は統合しても構わないと考えたのかもしれません。

 とはいえ、遠距離で曲射すればさすがに、命中率は低下するでしょうから、主砲2門搭載により、公算射撃を行いたいと考えたのでしょう。なお、曲射した場合の砲弾は、戦車の弱点である上面装甲に降り注ぎますから、大口径砲を搭載する必要が減ります。

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もしかしたら、あの粒子で存在意義が破綻した兵器なのかも……(イラストレーター:ハムシマ)。

 なお、宇宙世紀の遥かに進歩した自動装填システムであれば、砲弾の種類を柔軟に変更できると考えられます。現実の戦車でも、主砲からミサイルを撃てるものがありますが、61式戦車は必要であれば、片方の砲身からは誘導砲弾を放ち、もう片方からはミサイルを撃つといった、状況に応じた対応が容易なのでしょう。

 宇宙世紀の優れたデータリンクを想像するなら、偵察衛星やドローンなどの指示で、砲弾とミサイルを柔軟に切り替え、最大の戦果を挙げられる予定だったと推察できます。

 ただ、連装砲塔は交互射撃にせよ、斉射にせよ、砲弾の消費量が増えます。これについては、駆動機関を電気式にしたことで、車体の内部容積が増え、充分な砲弾数を搭載できるようになったのではないでしょうか。

 とはいえ、こうした利点は「電子兵装が使えれば」のハナシです。「ガンダム」世界でよく使われるレーダーをほぼ無力化する「ミノフスキー粒子」で、高度な電子兵装の補正を前提とした連装砲塔は本来の性能を発揮できず、誘導砲弾やミサイルを搭載する意味もなくなったと考えられます。

 本来は高性能兵器であった61式戦車が、想定外の「ミノフスキー粒子」によって性能を発揮できず、モビルスーツに撃破されたとしたら、実は「ガンダム」世界における戦車は、“悲劇的兵器” だと言えるのかもしれません。

【了】

【120mm砲2門搭載で攻撃力も倍!?】ドイツが造ったVT1-2試作戦車ほか

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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