「どこのフェリー?」自衛隊車両を積み込む謎の“民間船” 実は離島防衛の頼れる助っ人 船内大浴場も

民間船ならではの設備生かして災害派遣でも重用

 このように、すでに約7年もの実績がある高速マリン・トランスポートとのPFI事業契約。防衛省ではどのようにとらえているのか、当該部署へ聞いてみたところ「PFI船舶の導入により、民間船舶の調達・維持・管理を効率的・効果的に行うことができ、国による業務負担が軽減されたとともに、長期間にわたって、安定的に海上輸送力を確保することができた」との回答でした。

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2023年1月28日、「はくおう」に乗り込むために東京港に集結する陸上自衛隊第12旅団の車両群(深水千翔撮影)。

 たしかに「はくおう」は、内装にこだわりを持つ新日本海フェリーが整備した客室やレストラン、大浴場などの船内設備をそのまま使えるという点が大きなメリットだといえるでしょう。実際、2016年の熊本地震ではホテルシップとして活用されたほか、2020年2月には横浜港の本牧ふ頭に接岸し、船内で新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応に当たる自衛隊員の活動拠点にもなっています。

 防衛省は「2016年3月から2025年12月末までの事業期間において、さらなるPFI船舶を導入する予定はない」としながら、「次期契約については、防衛力整備計画において、海上輸送力を補完するため、車両とコンテナの大量輸送に特化したPFI船舶を確保するとしていることも踏まえ、自衛隊の輸送力と連携した大規模輸送を効率的に実施できるよう具体的な検討に取り組んでいく」としています。

 前出したように、防衛省・自衛隊ではこれ以上、自前の大型輸送艦の数を増やすことは厳しい状況です。そういったなか、離島防衛などを日本の安全保障上、重要視するのなら、PFIで民間船舶を有効活用していくのは、ひとつの手段として有効なのかもしれません。

【了】

【見れば見るほど素っ気ない?】PFI船舶「はくおう」の全景ほか

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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コメント

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3件のコメント

  1. そもそも200mを超えようが適用除外にして然るべきだろう

  2. この高速フェリーはちと残念だった。この船の先代は約20ノットで、舞鶴・敦賀から小樽まで約30時間、夜10時頃発で翌々朝5時頃に上陸して、そのまま北の大地を走り出せた。
    これが高速フェリーで約20時間に短縮されたため、小樽着は翌日の夕方に早まった。上陸してすぐ宿に向かうことになり、無駄に宿代が増え、船で過ごす特別な時間が減っただけで何も嬉しくなかった。
    のんびりした船旅も良いものだ。

  3. 二之舞的対馬丸!