「F-14トムキャットが一番好き」死にかけてもそう言える 生還した伝説のパイロットの“判断”

前見えず無線もダメ でも相棒救うため空母へ帰投

 この時、エドワーズ氏が追った怪我は、片腕の骨折と肺の損傷で、さらに右目も見えなくなっていました。コックピット正面のキャノピー前部も「落として画面の割れたスマートフォンみたいだった」(エドワーズ氏談)という状態になったため、前方視界は遮られた状態で、加えて酸素吸入用のマスクとそこに付いていた無線機まで剥ぎ取れてどこかへいってしまったそう。

 彼自身の怪我はかなり酷いものでしたが、緊急事態が発生したにもかかわらず、無線機が失われたことで、エドワーズ氏は外部と連絡する手段も喪失した状態でした。

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F-14の事故から生還し、スペースシャトルのパイロットになったエドワーズ氏(布留川 司撮影)。

 戦闘機が緊急事態になった場合、射出座席を使って機外に脱出する方法があります。しかし、彼は射出を試みることはしなかったといいます。「脱出は考えませんでした。バックミラー越しに後席を見ると、後ろに座っているRIOが負傷しているのがわかったし、私自身も出血していたから。この状態で周りに何もない海上へ着水するのは非常に危険でした」。

 機体を安定させるためにスロットルを下げて低高度まで降下。そして機体の状態を確認しました。コックピット内部と自身は酷い状態でしたが、幸いなことに機体の操縦系統はまったく異常がなく、パイロットが重傷であること以外は、機体はしっかりと機能したのです。

 自分と同僚を生還させるために、エドワーズ氏は機体を着陸させることを決意します。しかし、最寄りの空港に無線交信ができない状態で戦闘機を下ろすのは難しいと考え、決断したのは慣れ親しんだ母艦である空母「アイゼンハワー」へ戻ることでした。

 この時、エドワーズ氏は無線での交信手段を失っていたため、母艦の「アイゼンハワー」に接近しても自分たちの状況を伝えることは無理な状態した。しかし、空母側は接近するF-14にレドームがなく、着陸装置とフックを下ろしている状況を目視で確認したことですべての事態を把握したとか。そして、エドワーズ氏が着艦できるように空母を風上に向けて進路変更してくれたそうです。

【この状態で帰ってきたの!?】ボロボロ状態で空母に着艦するエドワーズ少佐操縦のF-14「トムキャット」ほか

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