映画超え?「タイムマシン版デロリアン」を自作 世界のマニアを味方にした男「手本にしないで」の真意
マニアだからこその探求心でパーツも自作
パーツ自体が手に入らない場合は、A車や資料を基に精巧なレプリカを自作。そこにもパーツごとで深いエピソードがあるといいます。
「運転席と助手席の間にある『ゴールドボックス』というパーツは、ニュージーランド人の友人が。車体後部にある排気口は、国内のデロリアン・オーナーズ・クラブの仲間がそれぞれ作ってくれました。この排気口は金属板を溶接でつなげて組み上げるのですが、劇中車では溶接部分にダマがあって仕上がりがとても荒いんです。そこで調べたら、劇中のドクは車の専門家ではないという設定のため、映画スタッフがワザとそう作ったらしいのです。それを再現しようとしたら、日本製の溶接棒だとどうも上手くできず、結局アメリカから部材を取り寄せ、ようやくドクの“仕事”を再現することができました」
津和さんのタイムマシン版「デロリアン」では、パーツごとにこういった裏話が “てんこ盛り” 状態で、聞いてきて飽きないほどでした。先に紹介した青島文化教材社の「デロリアン」プラモ担当者も、開発にあたって本車を取材したそうですが、その時も「車両の説明だけでたっぷり5時間くらいしてくれました」と笑顔で語ってくれました。
彼がこれほどのレプリカを完成させるには、手間や時間はもちろんのこと、何よりもそのヤル気を生み出す強い意志が必要となります。
「実は、この『デロリアン』はナンバーを取得しているので公道も走れます。でも、それ故に妥協した部分もあって、劇中車と比べたら異なっているところもあります。ですから、例えばアオシマさんの新キットを作るのであれば、私の『デロリアン』は手本とせずに劇中車を再現してほしいと思います」。
ここまで完成させた愛車を「見てほしくない」と言えるのは、津和さん自身が原作映画に対して極めて強いリスペクトがあるからでしょう。これこそが、彼やこの活動を支援してくれた世界中のファンたちを動かし続ける原動力なのかもしれません。
このタイムマシン型「デロリアン」は、5月14日まで静岡市内で開催されている「静岡ホビーショー」で展示・公開されています。ぜひ来場し、津和さんの心血が注がれた「愛車」を堪能してみてください。
【了】
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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