戦闘機配備されたことない空自基地に「ファントムII」なぜ? 愛称「ヨサク」YS-11と並んでいるワケ
美保でやっていた偵察型「ファントムII」の乗員訓練って?
美保基地での航法士の訓練は、特別改造されたYS-11を使って行われていました。最終的には偵察機RF-4に乗り込む偵察航法士も、最初は大型機などに乗り込む他の航法士と同じ訓練を美保基地で受けていたのです。
もっとも、偵察航法士になるには、美保基地での訓練は初歩的なもので、その後はRF-4に搭載された偵察機材の使用法や、偵察任務に関する独自の技術を習得する必要があり、一人前になるまでには長い期間が必要だったそうです。
航空自衛隊のRF-4偵察機は2020年に退役しており、その任務は無人機RQ-4 「グローバルホーク」に引き継がれました。一方、美保基地も2017年にすべてのYS-11が退役しており、以後、航法士の訓練は愛知県にある小牧基地のC-130H輸送機が担っています。
美保基地と「ファントムII」の繋がりを示す痕跡は、今の航空自衛隊にはもう残っていません。しかし、「南地区展示場」では、その過去の繋がりを示すかのようにYS-11とF-4EJ改が並べて展示されています。F-4EJ改は偵察機仕様ではなく、YS-11も航法士訓練に使われた機体ではありません。しかし、こうして改めて歴史をひも解いてみると、一見すると繋がりがないような戦闘機と美保基地が、意外と、関係性を有していたことがわかります。
中国四国地方で偵察仕様を含めて「ファントムII」が展示されている場所は、美保基地が唯一です。また初の国産大型ジェット機C-1についても、展示機は2023年5月現在、この1機のみです。これら展示機を眺めながら、意外な繋がりについて思いを馳せるのもいいかもしれません。
【了】
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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