ステルス戦闘機の時代は終わり? 「AI戦闘機」が変える戦い方 求められるのは“頭脳と学習”

AIはあくまでも人間を補助するもの

 さらに機種固有の信号パターン、状況や機動など様々な要素や各種学習データを蓄積することにより、カウンターステルス能力はさらに向上することが見込めます。

 こうしたAIによる信号処理はすでに実用化されていますが、まだまだ初期段階です。今後ステルス機を見破るための有望なアプローチとなることが期待されてはいるものの、課題がないわけではありません。

 たとえば十分な学習データがなければそもそも機能しないという点です。日本であればF-35の信号特性は大量に得ることができますが、アメリカのF-22、ロシアのSu-57や中国のJ-20といったステルス機の学習データがほしければ自分でなんとかするしかありません。

 さらにAIを作動させるには大容量のストレージやメモリー、計算能力に優れた処理装置(GPU)が必須です。これまで航空機用コンピューターといえば「化石」に近いものばかりでした。それは最新鋭のF-35でさえ例外ではありません。通常の飛行制御や信号処理プログラムを実行し飛行計器の映像を表示するだけであれば、高性能である必要はないからです。

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E-7「ウェッジテイル」早期警戒管制機と編隊飛行するMQ-28「ゴーストバット」無人戦闘機のイメージCG(画像:ボーイング)。

 AIの活用はカウンターステルスだけに限らず、赤外線センサーの映像から標的を識別したり、電子戦装置、飛行制御装置、戦術状況を認識したりと、その他の分野でも活用が見込まれることを考えれば、戦闘機は市販のハイエンドPCやゲーム機、ないしはそれ以上の水準が要求されるようになるかもしれません。

 現状、AIが高性能化したとしても、それが必ずしも「人間が不要な戦争」へ直結するとはみなされていません。将棋や囲碁のプロ棋士がAIを活用し、新たな戦法を開発しているように、軍事においても同様のことが考えられます。あくまでもAIは人間の能力を高めるためのツールとして活用されるでしょう。

【了】

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Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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コメント

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1件のコメント

  1. 「最終的な武器使用の意思決定を行うのは誰であるのか」はAI戦闘機の出現には全く関係ない。戦闘許可が出てさえいればその都度判断する必要はないわけだし、判断が必要な場合はそこだけ上司に確認すればよい。極論人間を置き換えただけ。実用化の大きな壁はAIは人間のようにミスすること。同じ命令を繰り返し与えても解答が異なる、これはいわゆる通常のコンピュータではありえないことだがAIにおいては厳密には解決不可能。