なぜ? 羽田空港「旅客機の接触事故」で浮かぶ疑問 航空管制からすると“あるある”?
羽田空港の誘導路で旅客機2機の接触事故が起きました。その発生と対処において、疑問に思われるポイントがいくつかあります。航空管制のルール、そして過去に管制官として現場に携わった経験などから現場の裏側を解説していきます。
誘導路に2機並べるも「あるある」
不注意だった、と言われればその通りともなってしまう可能性も否めませんが、タイ国際航空側から見れば、エバー航空機が斜めに停止していたというのもまた不運だったと感じます。
直角に交差する誘導路であれば目視での翼端間隔が正確に把握できたと思いますが、今回エバー航空機が止まっていたのは、滑走路に対し斜め向きに交わる誘導路でした。タイ国際航空のパイロットは近いとは思ったものの、斜めであることで目測を誤った可能性もあると考えられます。
航空機追跡サイト「フライトレーダー24」で同機の航跡を見ると、交差する直前でやや減速している風にもみえます。同機はセンターラインを守って走行しているうえ、管制官からの指示を受けていることもあり、通過可能と判断したのではないでしょうか。
追い越しがあった点については、管制官が指示したのか、タイ国際航空のパイロットが誤認したのか交信を聞かないと分かりませんが、航空交通処理の観点から見ると、ここで出発2機を並行に滑走路手前まで誘導することはメリットが大きい手法です。
もともと、事故発生直前には、エバー航空機の出発の地上走行を追いかけるようにタイ国際航空機の出発が追従していました。エバー航空機がすぐに離陸できる交通状況であれば、タイ国際航空機の出発もエバー航空に続くように同じ誘導路への進入を指示することを考えますが、エバー航空機をすぐに離陸させられない状況となると、その結果、タイ航空機が滑走路と平行に配置された主要な誘導路を塞ぐことになり、他機の通行の妨げになってしまいます。
管制官の心理としてはタイ国際航空機を1本先の誘導路で待たせ、滑走路進入のタイミングをうかがいたいと思うでしょう。そして、このような運用は羽田のみならず、日本全国の繁忙空港では一般的な手法なのです。
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