戦艦「扶桑」は別格? 旧国名が使われなかった理由 いまだ海自が使わない “とっておきの艦名” は

1915年の竣工当初は世界最大の戦艦として注目された戦艦「扶桑」。ただ、旧海軍の戦艦というと「大和」や「長門」など、旧国名が付けられるはず。同型艦「山城」も旧国名なのに、なぜ「扶桑」だけ違ったのでしょうか。

「ふそう」の艦名は自衛艦で復活するか?

「扶桑」は、中国で「東方の果てに生えている伝説の巨木」を指す言葉で、そこから太陽が昇ると考えられていました。太陽が毎日昇ってくることから「再生」の力があり、古来の神仙思想では「扶桑樹」はユートピア、「仙境」に生えるとされているものでした。

 629年に書かれた中国の歴史書「梁書」が出て以降、「東海に実在する島国に扶桑樹が生えている」と考えられるようになり、転じて日本の別名とされるようになったのです。このように漢語由来ではあったものの、平安時代の私撰歴史書「扶桑略記」のように、日本人も自国の名称として使用してきました。

 こうした由来からも、世界最大の戦艦を建造するにあたって艦名に「扶桑」の二文字を選んだのは、旧日本海軍、ひいては日本が同艦に対して大きな期待を抱いていたからこそでしょう。ちなみに、2番艦「山城」も、国名とはいえ平安京が置かれた場所の国名であるため、日本を代表する国と言え、これも「とっておきの艦名」と見ることができます。

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1930年代に東京湾で撮影された第二次改装後の写真。手前から「山城」「扶桑」「榛名」(画像:アメリカ海軍)。

 ちなみに、後の戦艦「大和」も奈良県の旧国名でありつつ、日本全体の意味を持つ名称でもあり、「武蔵」についても首都東京がある場所の旧国名であるという観点から、「山城」と同じく「期待の表れ」と言えるでしょう。

 1945(昭和20)年に太平洋戦争が終わり、旧日本海軍が解体されると、軍艦に旧国名が付くことはなくなりました。それから80年近くが経ち、いまや海上自衛隊でも、ヘリコプター搭載護衛艦で旧国名の艦名が復活するようになりましたが、「ふそう」「やましろ」「やまと」「むさし」はまだ命名されていません。

 ひょっとしたら今後、画期的な艦型が登場した時に備えて「とってある」のだと、筆者(安藤昌季:乗りものライター)は考えています。

【了】

【就役から戦没直前まで】戦艦「扶桑」の写真をたっぷりと(写真)

Writer:

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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