イスラエルもついに戦車供与? 独自のガラパゴス「メルカバ」はウクライナで戦えるのか

仮にウクライナへ渡ったら、戦えるのか

 中東戦争後に機甲戦闘はほとんど起きておらず、メルカバは対アラブゲリラ戦で市街地戦闘を見据えた非正規戦仕様になっていきます。もはやフロントエンジン方式のメリットはありませんが、新戦車を開発するリソースもなく、やむを得ずそのまま使われているのが実情です。

Large 230619 mrkv 02

拡大画像

メルカバはアウトレンジからの待伏せ用駆逐戦車ともいえる。遠くまで見渡せ、地面には砂礫が多いイスラエル防衛戦の戦場環境がよくわかる写真(画像:イスラエル国防省)。

 現在のウクライナでは、20世紀末に想像されていたような戦車どうしの本格的な機甲戦闘は起こっていないようです。レオパルド2など「期待の西側戦車」も実戦に投入され、損害も出ているようですが、ウクライナでウクライナ軍が使うメルカバが活躍できるかは懐疑的です。

 前述のようにメルカバはイスラエル防衛専用ともいえます。例えばサスペンションが柔らかく、フロントエンジン方式という重量バランスもあり、高速走行や射撃時の車体動揺幅が大きいとされます。停止直後の射撃や連続射撃では精度が落ちます。でも柔らかいサスペンションは砂礫の多いイスラエルの環境では走破性に優れ、高速走行の必要ない長距離砲戦や非正規戦向きと考えられているのです。

 最初から輸出することも念頭に開発される欧米戦車とは、設計思想が根本的に異なるので、イスラエルの戦車は日本の国産戦車とも似ています。

 メルカバが本当にウクライナに引き渡されるかはまだ憶測の域ですが、イスラエル軍もウクライナ戦争の影響を受けていることは間違いないでしょう。というのも、2022年までは自国戦車戦力の増強には熱心でなく、メルカバの最新型Mk.4 Barak(Mk5か)の開発も2020年から遅延していました。しかし、ウクライナ情勢を受けて危機感を持ったのか運用試験を再開し、早ければ2023年中には配備開始されるともいわれているからです。

【了】

【え…】ユニークゆえの“弱さ” レオパルト2などと比較して一目瞭然(図解)

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。