どうする「戦車動物園」 ウクライナ復興のカギになる車種整理 自国開発か欧米製導入か
「復興」のウラでうかがうビジネスチャンス
ドイツ政府が今年初めまでレオパルト2の供与を認めないほど慎重だったのとは対照的に、ラインメタルのアーミン・パッパーガーCEOは2月初旬、「ドイツ政府が承認すれば、ウクライナへ最新型戦車KF51『パンター』を供与する可能性があり、生産工場まで建設する用意がある」とぶち上げています。ゼレンスキー大統領とキーウで直接会談するなど盛んにトップセールスを行っています。
5月13日には、ウクライナの国営軍事企業「ウクロボロンプロム」との提携による装甲車分野の合弁会社の設立を発表しました。ラインメタルはこの新会社の51%の株式を保有し、事実上の経営権を握っています。2023年7月頃には新会社を稼働させる予定とされます。
ラインメタルは同じドイツのクラウス=マッファイ・ヴェクマン(KMW)と共同で、MGCS(Main Ground Combat System)という次期欧州標準戦車を開発していますが、一方では独自でKF51というコンセプトモデルを発表して、KMWから不興を買っているというややこしい関係です。パッパーガーCEOは「MGCSの完成は2040年以降であり、ウクライナのニーズに間に合わせるためKF51パンターを提案している」と主張しています。本当にKF51をウクライナで生産するかはわかりませんが、ウクライナ復興は有望なビジネスチャンスと見て先手を打ったことは間違いなさそうです。
ほかにも2023年5月30日、イギリスのチャレンジャー2戦車やM777榴弾砲のメーカーであるBAEシステムズがウクライナ事務所を開設することが明らかになっています。
ウクライナ復興会議は6月22日に閉幕しましたが、会議は民間企業の参画の重要性も指摘しており、日本を含む42か国の計500近くの企業が復興や再建を支援するとの意向を示したとされます。しかし、実際の民間企業の動きはすでに活発化しています。「復興」といえばポジティブなイメージですが、多くの政治経済的思惑が絡んだきれいごとではないことも見せつけられます。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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