フランス軍機なぜ“飛んで埼玉”入り? 目的地は入間じゃなくて「所沢」か トム・クルーズもしがみついたA400M

「映画とは違うんだよ」フランス軍人がトビラ開閉を実演

 ちなみに、A400Mはある映画に出演したことで有名となりました。それが2015年に公開されたトム・クルーズ主演の『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』です。

 この映画では、トム・クルーズ演じる主人公「イーサン」が、滑走するA400Mの側面の空挺扉の風除けにしがみつき、そのまま離陸するというシーンがあります。トム・クルーズはこのシーンの撮影でスタントマンを使わずに自ら行い、なんと実際にA400Mの機体側面にしがみついて空を飛んだのです。

 劇中では、イーサンの仲間が飛行中のA400Mにハッキングを仕掛けて、遠隔操作で空挺扉を開くことに成功。イーサンは機内に侵入することに成功します。しかし、撮影ではトム・クルーズは離陸から着陸まで機体左側面で過ごし、強烈な風圧に耐えて生還しています。

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入間基地に飛来したフランス空軍のA400M輸送機。共同訓練では航空自衛隊のC-2輸送機との合同飛行も行われた(布留川 司撮影)。

 筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)は過去、アメリカに滞在していた際にエアショーで展示されていたフランス空軍A400Mで、前出の『ミッション:インポッシブル』の登場シーンについて聞いたことがあります。

 そこに居たA400Mのクルーに「トム・クルーズの乗った輸送機だよね」と聞いてみると、最初は「その質問、何度目だ……」といった感じで苦笑いしていましたが、やがて「映画とは違う本当の事を教えてあげよう」と筆者を機内に招き入れてくれました。

 そして、トム・クルーズが撮影でぶら下がった左側の空挺扉の前に行くと、「あの映画では仲間がハッキングして、スイッチひとつでこの扉が開いたよね?」というと、空挺扉を力いっぱいに持ち上げて「この扉は人力でしか開かないんだ!」と笑いながら教えてくれました。

 ちなみにそのクルー曰く、劇中で描かれたようなハッキングで機体を制御するのは「無理だろう」とのこと。今回の入間基地での取材では、残念ながらフランス空軍の隊員を含むA400Mの関係者と話す機会はありませんでしたが、間近で同機を再び目にして思わず前述のエアショーでのやり取りを思い出してしまいました。

 こうして、再び出会うことができたフランス空軍のA400Mも、冒頭に記したように一緒に来日した戦闘機「ラファール」2機や空中給油・輸送機A330MRTTとともに29日には日本を離れています。

 次にフランス空軍の戦闘機や輸送機が来日するのはいつになるのか。昨今の国際情勢を鑑みると、ひょっとしたら案外日数を置かずして再び見られるかもしれません。

【了】

【やって見せよう! 映画とは違うんだよ】空挺扉の開閉シーン&A400Mのコックピット(写真)

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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